トラベルヘルスの豆知識 旅先での健康管理~機内編~

ナースライター YUKAKO
ナースライター YUKAKO
トラベルヘルスの豆知識 旅先での健康管理~機内編~

コロナ渦での規制も緩やかとなりはじめ、少しずつ外出や旅の需要が戻ってきましたね。まだまだ油断は出来ませんが、以前のようにお出かけや海外旅行を楽しみたいという、旅好きな看護師の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。お仕事で修学旅行などの添乗をされる方もいらっしゃるかもしれません。今回は、移動手段として利用される乗り物の中でも、日常とは少し違った特殊な環境である「飛行機内」での健康管理に焦点を当てていきます。「旅先での健康管理~機内編~」として、国際空港での検疫官や、海外渡航者を専門とするトラベルクリニックの看護師として働きながら渡航医学に携わってきた筆者の経験をもとに、あなた自身にも、大切な誰かのためにも役立つ健康管理をご紹介します。



1.機内で健康に影響しやすい4つのポイント

機内で健康に影響しやすい4つのポイント

地上と機内の環境の違いにおけるポイントは
「気圧の変化」
「湿度の低さ」
「長時間の座位姿勢」
「揺れ」
の4つです。

中でも、日常生活との一番大きな違いは「気圧」です。機内では、地上に近い環境を人工的に作り出しています。しかし、その環境は標高約2,000mの山に登っているのと同じような状態にあり、地上と全く同じではありません。

また「湿度」は、機内に取り入れている外気の湿度が極めて低いことから、20%以下となっています。サハラ砂漠の平均湿度は30%前後と言われていますので、砂漠よりも乾燥した環境です。

さらに、狭い空間では自由な身動きをとることも難しく「長時間にわたる座位姿勢」は避けられません。

天候に左右されやすい乗り物ですので、気流の悪いところを通過するときには予期できない大きな「揺れ」が生じることもあります。
では、これらのポイントは、健康にどう影響しやすいのでしょうか?



2.特殊な環境が揺さぶる健康状態、どんなことが起きやすい?

「気圧の変化」は、航空機の離・着陸時の15~30分間に起こります。
体調の異変を感じやすくなるのもこのタイミングです。機体の上昇に伴い、機内の気圧が下がることで気体が膨張し、下降に伴い収縮します。標高の高い場所で、ポテトチップスの袋がパンパンに膨らむのを見たことがあるのではないでしょうか。体内でも同じ現象が起こるため、鼻や耳、腸など体内に閉じ込められている空気によって、航空性中耳炎や副鼻腔炎を発症する、虫歯が痛みだす、お腹の張りなどを感じることがあります。

「湿度」の低さは、皮膚や粘膜の乾燥を引き起こしますので、鼻やのどの痛みを感じやすくなります。また、コンタクトレンズを使用している場合、目の乾燥によって角膜を傷つけやすくなりますし、適度な水分補給が出来ていないと脱水を引き起こす危険性も潜んでいます。

「揺れ」への耐性は人それぞれですが、乗り物酔いをしやすい方の場合、エアシックと呼ばれる空酔いによって吐き気に見舞われたり、嘔吐されたりする方も珍しくありません。

「長時間にわたる座位姿勢」は、フライトが長時間になるほど深部静脈血栓症の発症リスクとなります。

このような特殊な環境による不可抗力から健康を守る予防策はあるのでしょうか?



3.事前準備で備えあれば憂いなし、機内での健康管理

事前準備で備えあれば憂いなし、機内での健康管理

上空での不可抗力に対しても、きちんと対策していれば随分と快適に過ごすことができます。最初にご紹介した4つのポイントからそれぞれの対策をご紹介していきます。


① 気圧の変化

完全に予防できる方法はありませんが、飴やガムを食べることで耳抜きがしやすくなり、航空性中耳炎になりにくいと言われています。アレルギー性鼻炎や鼻風邪を引いている場合、搭乗前や着陸のベルトサイン点滅前に点鼻薬を使用しておくことで症状を軽減させることが期待できます。気圧の変化が大きい下降時に、意識して唾液を飲み込み、圧を抜くことが出来ますので、眠らずに起きておくこともポイントです。
耳抜きがうまく出来ない乳幼児などお子様連れの場合は、ミルクやおしゃぶりを含ませてあげることで対処しやすくなります。また、炭酸飲料を控えめにしておくことでお腹の張りを軽減できます。


② 湿度の低さ

肌が乾燥しやすい方は、保湿対策にハンドクリームやリップクリームなどの保湿対策グッズを用意しておきましょう。ドラッグストアなどで保湿目的のマスクなども販売されていますので、そういったアイテムを試してみるのも良いかもしれません。喉が弱い方は、のど飴などを用意していると楽に感じられることがあります。コンタクトレンズを使用している方は、長時間の装着には注意し、機内では眼鏡を使用することをお勧めします。


③ 長時間の座位姿勢

長いフライトでは特に、締め付けのないゆったりとした服装で搭乗することがおすすめです。
水分は意識的にしっかりと摂取し、脱水を助長しやすいカフェインが含まれるドリンクやアルコール類は控えめにしておきましょう。着席中も時々足を動かしたり、トイレに立つ際にストレッチをしたり、通路を歩いたりするなど、なるべく長時間の同一姿勢が続かないよう意識的に体を動かすことが大切です。弾性ストッキングを履いてみるのも選択肢のひとつです。


④ 揺れ

翼の上あたりの座席を予約することで、やや揺れを感じにくくなると言われています。
上半身があまり動かないよう、ヘッドレストに頭を預け、なるべく遠方を眺めるか目をつむことで視界の揺れが少なくなります。また、アルコール類や食事の摂りすぎは吐き気を助長しやすくなりますので、程々に調整しておくことも大切です。座席ポケットにはエチケット袋が用意されていることが多いので、あらかじめ確認しておくと安心です。
医師に処方してもらえる酔い止め薬もありますので、ひどく乗り物酔いしやすい方は事前に医療機関で相談してみましょう。市販薬でも酔い止め薬は購入できますが、病院での処方との違いは薬の成分の配合量です。いずれを選択するにしても、他に服用しているお薬がある場合には、飲み合わせが悪いこともあります。必ず医師、薬剤師、登録販売者に相談のうえ、ご自身にあったお薬を選択できるように準備できると安心です。
そして機内では安全のため、シートベルトの着用をお忘れなく。



まとめ

空の旅を楽しむための機内での健康管理についてお届けしました。ぜひ、上空での看護の引き出しも増やしてみてください。
今回は、健康な方をベースに説明しました。人それぞれ体調や持病に合わせた注意事項がありますので、特別な事情がある際には必ず主治医へ相談しましょう。そして、利用する航空会社の規約を確認し、配慮が必要な場合には事前に相談しておくことも大切です。
コロナ禍を懸命に走り続ける看護師の皆さんにとって、今後の素敵な思い出づくりの一助となりますように。



ライタープロフィール

【YUKAKO】ナースLab認定ライター
渡航医学が大好き。座右の銘は「看護師免許は自由へのパスポート、免許に使われるのではなく自由に使って下さい」。いつかGlobetrotterになる日を夢見て働き方をデザイン中。

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