患者さんの急変や入院など、予測できない事態への対応が多い看護師。それに加え、看護計画の見直し、看護研究、委員会、勉強会、新人指導など、求められる仕事はたくさんあります。また「時間を意識しながら動いたのに、記録を書いていたら定時を過ぎていた」なんて日も。
しかし、多忙な業務でありながら颯爽と丁寧に仕事をこなしていく先輩たちの姿。その行動を観察してみると、そこには仕事をスムーズにするためのコツがありました。今回は“デキる先輩”たちに共通しているポイントをお伝えいたします。
1.スケジュールに余裕をもたせる
1日のスケジュールに余裕をもたせることで、急な検査や入院など臨機応変に対応できます。
そのためには、検査や処置、患者説明や検温、看護記録など、ひとつひとつの業務に自分はどのくらい時間がかかっているのか、しっかり把握する必要があります。
実際に時間を測ってみると、意外な業務に時間をかけてしまっていることもあります。私の場合は看護記録でした。患者1人あたり5分程だと思っていましたが、10分近くかけていました。
そこで先輩と比べて時間がかかっている業務を振り返ってみると改善点が分かってきました。まずは先輩と同じように検温や処置後すぐに記録するようにしました。記録する時間が取れないときは、記録に残したい患者さんの発言、与薬・処置の時間などはしっかりメモをとるようにします。そうすることで、記録にかかる時間を短縮できます。
とても基本的なことですが、こうした細かな行動が効率のよい業務につながり、ミスを防ぐことができます。また自分なりに改善しながらさらに余裕のあるスケジュールで進めます。
しかし、入院や検査が重なり、時間に余裕のないスケジュールになることも。その場合は、1人だけで抱え込まず、他のスタッフに頼るようにしましょう。定時の2時間前にスタッフで集まり、どんな業務が残っているかを言い合い、業務を分け合って調整している病棟もありました。予測できない事態に備え、チームで業務量を調整し、スケジュールに余裕ができると定時帰りにぐっと近づきますね。
2.分かりやすいメモのコツ
人間の記憶は曖昧です。だからこそ、自分の記憶は頼りにせず、指示書やメモを確認しながら作業することが大切です。また、メモの使い方ひとつで1日のスケジュールが組み立てやすくなります。
メモの工夫としては、点滴の時間指示は赤字、患者指導などの時間を確保しておく場合は青字など、業務別に色分けされていたり、申し送りに必要な情報をメモする場所が決められていたり、漏れることがないようにします。
また、略語を使って簡潔に表現することも、メモの余白を最大限に活かすためのポイント。
私のメモは何を書いたのか、分からなくなることも。しかし先輩のメモをまねすることで、1日のスケジュールも見やすくなり、業務調整がしやすくなりました。
3.一人で抱え込まず分担作業で効率よく
看護研究や委員会、勉強会などの資料作りは、できれば勤務時間内に終えたいです。
私は、夜勤明けにそのままよく資料作りをしていましたが、作業スピードは遅く、誤字脱字も多いので効率がとても悪いです。だからといって、勤務中に時間確保することは難しい。
ですが、先輩たちは勤務中に取り組んでいます。落ち着いている日に隙間時間を活用しているので、効率よく進めているのが伺えます。
また、勉強会の準備は、たくさんのスタッフを巻き込むことが大切です。作業を分担して取り組むことで、1人1人の負担は少なくなるうえ、いろんなスタッフと関わりながら進めるので、何よりも多くの学びが得られます。
私は、患者指導パンフレットの作成で、あるページを担当させてもらったのですが、学び直すことがたくさんありました。また、作り上げた時の達成感は計り知れません。スタッフとの関わりなどもより深いものになります。
4.思考をうまく言語化する
新人指導やカンファレンスなど、自分の言葉で説明する場面は多くあります。その場合、要点を絞って分かりやすく自分の考えを説明できると、スムーズに進みますよね。
先輩の説明では、例えば新人指導をするとき
「こう考えたから、このケアをした」
「リスクを考えて、この順番で患者さんをみた」
など、思考の過程を簡潔に伝えてくれるので、分かりやすく理解することができました。
多忙な現場で、常にケアの根拠や優先順位を考えながら、効率よく仕事し、患者さんに対しても丁寧な関わりをしているからこそ、言語化することができるのだと思います。
私は、指導のときに簡潔に説明できないことが多く、時間がかかってしまうことがありました。そのため、日頃からケアの根拠や行動の理由を考え、新人看護師に説明するならどう伝えるかを意識しながらシュミレーションするようになりました。
5.ベストコンディションで仕事にのぞむ
体調管理は、仕事に集中して取り組むための基本ですよね。寝不足や風邪などによって、集中力散漫になって、結局定時に帰れなかったという経験は誰もがあるのではないでしょうか。
体調管理は毎日の食事に気を遣い、睡眠をしっかり取るだけでなく、無理をしないということが大切です。子育て中の先輩は、家事代行サービスを利用したり、夕食に宅配サービスを活用したり家事の負担を減らす工夫をしていました。
その分、家族との時間を楽しんだり、自分の時間を確保したり時間を有効に使うことができます。プライベートの充実は、仕事のパフォーマンス向上にも影響するので、まさにワークライフバランスが大切ですね。
まとめ
私が病棟で働いていたときに学んだ定時で帰るための5つのポイント、どれかひとつでも参考になったものはあったでしょうか。私は新人の頃はどれも苦手で、残業時間も多かったです。しかし、デキる先輩の真似をして、これらのポイントを意識したことで、定時で帰れる日が増えていきました。
はじめは、時間ばかり意識して慌ててしまうより、ひとつひとつ丁寧に、考えながら仕事を覚えていくことの方が大切です。仕事に慣れてきたけれど、なかなか定時で終わらない、そんなときは私のように周りにいるデキる先輩を真似してみるといいかもしれません。
~ライタープロフィール~
【凛(Rin)】ナースLab認定ライター
対患者さんだけでなく、看護師だからできるライティングを通して、安心や笑顔を届けたいと活動している看護師ライター。医療・看護・教育に関する専門知識を活かし、1人でも多くの人が安心できる、笑顔になれる情報や言葉を発信していきたいと執筆活動中。
看護師10年目、現在は小児・重症心身障害児看護に携わる。これまで、がん看護、緩和ケア、訪問看護の経験あり。健康やいのちの教育に興味があり、働きながら養護教諭第Ⅰ種免許も取得。
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