訪問看護は病院以外の働き方として、興味のある人も多いのではないでしょうか。今までの病院との業務の違いもあり、「一人で行って一人で判断しないといけない」「自分の経験や知識で大丈夫だろうか」と不安がある人も多いと思います。訪問看護を始めて9年目の私が訪問看護に絶対必要なスキルをお伝えします。意外にこんなことでいいの?と思うかもしれません。
1.接遇・マナー
訪問看護はご自宅などへ訪問、お邪魔させていただき、看護を提供するサービスです。皆さんが自分の家に人を入れるなら、どんな人だったら安心できるでしょうか?身元がはっきりしていて、服装は清潔感がありきちんしている。あいさつができ、靴をそろえてから家に入るなどのマナーが必要です。
また、ものを大切に丁寧に取り扱うことを忘れないようにしましょう。物品を使わせてもらう時は毎回許可をいただきます。物品の雑な取り扱いはその看護師の利用者さんに対する接し方を連想させるので注意が必要です。家では何気なくやっている行為、例えば、私の場合は台所の棚の扉を足で閉めるなどです。意識しないとつい出てしまいますので気をつけてくださいね。
2.笑顔でコミュニケーション
訪問看護では、さまざまな医療機関、クリニックの医師、看護師、ケアマネージャー、そのほか介護サービスのスタッフなど多くの方との連携が必要です。話しやすい雰囲気づくりや、普段からの関係性も大切です。お互いにとって良いコミュニケーションを取れるように工夫しましょう。まずはいつも笑顔を心がけ、相手の立場になってどんな言葉で伝えれば伝わりやすいのかを考えます。相手に合わせ、医療用語を使わないなどの工夫が必要です。逆に、医師への報告などは一度練習してから落ち着いて行えば大丈夫です。
3.相談する勇気
訪問看護は一人で訪問して、一人で判断し、ケアをしてこないといけないと思い込んでいませんか?
訪問看護ステーションは常勤換算2.5人以上の看護師を確保していないと開業できません。それは、チームとして地域の利用者さんを支えるためです。ですから、困ったとき、不安があるときはその場で相談しましょう。病棟で、困ったことがあったらどうしていましたか?先輩を呼んできて一緒に見てもらう、一緒にやってもらっていたと思います。または医師にコールして相談していたはずです。
訪問看護では、病院と違ってすぐにたくさんの医療者にその場で相談することが物理的にむずかしいだけで、看護の違いはありません。現在はスマホを活用し、時にはテレビ電話で傷の状態を確認してもらったり、動画や画像を撮影して医師に診てもらったりすることもあります。
訪問看護は、週に1回または2回程度と限られています。次に医療者が訪問するまでに利用者が安全、安楽に過ごせるようにどうしたらいいかが一つのケアの基準となります。その上で緊急性を考え、医師への適切な相談手段はメール、FAX、電話なのかを考え、先輩への相談はその場でするのか、ステーションに帰ってからにするのかを判断しましょう。でも迷ったら、絶対に相談です!
4.何気ない気づきをアセスメントに変えよう
玄関を入った時から「あれ?いつもと様子がおかしいぞ」と思うことがあるかもしれません。その時にいつもと違うと感じた何かしらの理由があるはずです。それは匂いですか?部屋の温度ですか?利用者さんの声のトーンはどうですか?いつもは部屋が綺麗なのに少し散らかっている、ゴミが片付いていない。いろんな情報が五感に飛び込んでくると思います。
それはもしかしたら病院よりもたくさんの情報かもしれません。そして、「あれ?体調が悪いのかも」とアセスメントにつなげます。さまざまな情報に対して自分が感じ取ったこと、「〇〇かもしれない」を大事にします。
利用者さんの体に何か起きているのかもしれないと予測したら、バイタルサイン測定、聴診、打診、触診に加え、問診もいつもより丁寧に行いましょう。体の異変に気がつくことができると思います。また、利用者さんの訴えからもフィジカルアセスメントをはじめていきましょう。観察できる医療者は自分しかいませんので、基本に則り丁寧に確実に行い、アセスメントに自信がなければ相談するというスタンスがあれば、訪問看護は決して怖くありません。
5.疑うスキル
先ほどのアセスメントにもつながりますが、自分が行ったケアが利用者さんの看護問題の解決に本当につながっているかを毎回疑いましょう。訪問看護の対象者は慢性期の方が多く、急変のリスクはあっても穏やかに経過していく方が多いです。毎回決められたケアを行ってくるだけで、利用者さんの変化が感じられないこともあります。
また、事業所の体制によっては毎回自分しか訪問しないというケースもあります。ある意味サボることも、ごまかすこともできてしまいます。今日の自分のケアがどうだったか、次の訪問までに何を期待して行ったのか、そして次回の訪問でそれはうまくいっているのかを評価しましょう。看護過程のPDCAを回すことです。
私は看護に満点の正解も0点の不正解もないと思っています。だからこそ自分のケアを評価しなければ、もしかしたら独りよがりになってしまったり、利用者に必要なケアを見逃したりする恐れがあることを心に留めて欲しいです。もちろんうまくいった時は大いに自分を褒めましょう!
まとめ
多くの難しい知識や経験が必ずしも必要ではないことがわかっていただけたでしょうか。その方のより良い暮らしのために、訪問看護師は利用者さん、その家族、関係スタッフの皆さんと誠実に関わること。それが何よりも大切なスキルだという事が伝わると嬉しいです。
~ライタープロフィール~
【西山妙子 (にしやまたえこ)】ナースLab認定ライター
総合病院の外科・脳外科病棟、ICU、大学病院手術室に勤務。結婚、子育て療育を経て訪問看護の道へ。病院の業務で疲弊しないでほしいと看護師の横のつながりや、新しい看護師のライフスタイルの提案を行うナースのためのオンラインサロン「ナースライフバランス研究室(ナースlab) 」を2017年10月より企画運営(現会員数約1000名以上)
マインヘルスケア株式会社代表取締役
Facebookにて「今日のおかずはなんだろうな」料理ライブ配信
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