高齢者はさまざまな疾患を有しており、健康の維持、疾患管理のためには多くの薬を内服しています。しかし、摂食嚥下機能が低下している高齢者では、錠剤やカプセル錠に対して飲み込みにくさを感じている方も少なくはありません。そのため、看護師は通院・通所時や入院時に内服に関するアセスメントを行うことが求められてきています。そこで、今回は内服に関するアセスメントと内服のコツについてお伝えします。
内服に関するアセスメント
内服時は水と一緒に口にいれることが多くなります。この内服方法には、錠剤などの「固形物」と「液体」の2種類の異なる物性のものを同時に処理するという高い難易度の嚥下機能が必要です。加えて、薬剤を口から咽頭・食道へ送る際に、薬剤は液体の中に保たれる必要があり、そのためには摂食嚥下関連筋群の高い協調性が必要になってきます。
この協調性がうまく機能しないと、液体のみが先に咽頭内に入ってしまい、飲み込みが間に合わずむせなどを生じさせ誤嚥のリスクを高めてしまいます。そのため、内服には、舌の動きや嚥下状態などの嚥下関連筋群の観察、呼吸状態や意識状態の観察が必要になります。加えて、今まで内服でのどや胸につかえたり、錠剤などが舌の上などに残ったりしたことはなかったかなどの問診することで、内服がどの程度可能であるかアセスメントを行うことができます。内服についてのアセスメントツールであるPILL-5(ピルファイブ)の使用も内服状態を知る助けとなります。
PILL-5(ピルファイブ)とは
「PILL-5(ピルファイブ)[日本語版]アセスメントツール」は国内初、服薬時の嚥下に特化した自記式アセスメントツールで、5つの質問からカプセルおよび錠剤の嚥下の程度をスコア化し、判定結果と対処法を確認できます。合計点が6点以上だと軽度~中等度の錠剤嚥下障害の可能性があり、12点以上だと中等度~重度の錠剤嚥下障害が考えられます。(0~20点満点)軽度~中等度では服薬用ゼリーやペースト状のオブラートの使用が推奨され、中等度~重度の場合は薬の形状変更を検討します。
内服のコツ
水で飲む場合、たくさんの錠剤などを一気に口に入れていたり、錠剤などをのどに送り込むために顎を上げて飲み込んだりしている人をよくみます。1錠ずつ飲み込む、意識して顎を引いて飲み込むだけでも錠剤などの飲み込みやすさが変わってきます。
内服方法には水で飲む方法の他にも、粉砕にする、ゼリーやトロミ水と一緒に飲む、簡易懸濁法などの方法があります。
粉砕には注意が必要
摂食嚥下障害を疑う人に対して粉砕は、多くの施設において行われています。しかし、粉砕する際に、看護師が細胞毒性のある薬剤を吸引する危険性があったり、粉砕することで製剤特性を損なったりする可能性があり注意が必要です。粉砕により薬効が強くなったり弱くなったりした場合、時には血圧が急激に低下するなど病状に重大な悪影響を与えてしまうこともあるからです。このように、粉砕には多くの問題があるため、薬剤師に相談し慎重に行う必要があります。
簡易懸濁法
そこで、おすすめできる方法に簡易懸濁法があります。
簡易懸濁法とは、錠剤粉砕やカプセル開封をせずに、錠剤・カプセル剤をそのまま温湯にて
崩壊懸濁させる方法です。経管栄養をされている人の服薬方法としてもよく用いられています。
具体的な簡易懸濁法の方法は、まず温湯(55℃)を準備し、次に処方薬1回分を薬杯等に入れ、その上に温湯をいれて崩壊・懸濁させます(5~10分)。温湯は、電気ポットの湯と水道水を約2:1になるように入れる方法や、60℃等の温度設定ができる電気ポットや湯沸かしポットを使用することで準備しやすくなります。水分にトロミを付けている人の場合は、濃度を確認して、必要があればトロミ剤を使用しとろみをつけます。ただし、トロミがつかない薬剤もあるため注意が必要です。
簡易懸濁法には、粉砕により看護師が薬剤を吸引することもなく、粉末状にできない薬が使用でき、薬剤の効果が保たれた状態で内服が可能となるというメリットがあります。ただ、簡易懸濁法もすべての薬剤で行えるというわけではありませんので、薬剤師への確認は必要になります。
その他の内服のコツ
市販の服薬用のゼリーなどゼリー状のものと一緒に内服するのも一つの方法です。ただし、ゼリーは離水しやすいため、使用前には確認し水分を取り除くなど配慮が必要です。
錠剤が見えていると内服が困難な人の場合は、ブドウ味など色がついているゼリーを使用すると、薬がみえにくくなり自然に内服できることがあります。また、苦みの強い薬には、チョコ味のゼリーなどと一緒に内服するなどの工夫を行うと、苦みが和らぎ内服しやすくなります。
食事に混ぜて内服している場面をみることもありますが、苦みやにおい、刺激性のある薬が多いため、食事の楽しみを奪ってしまう可能性があり、食事に薬を混ぜることは基本的には避けたい方法です。食事の最後に疲れてしまう場合は、食事の途中に内服するなど内服のタイミングなどを検討してみましょう。
まとめ
看護師は内服の問題にまず気づくことが大切です。
嚥下障害も含め内服に問題がある場合は、内服の数・回数を減らせないか、貼り薬など錠形を変更できないかなどその人に適した方法を、医師、薬剤師、リハビリスタッフなどと協働し検討していきましょう。
参考引用文献:
ニュートリー株式会社webサイト2021年08月19日掲載「もしかしたら、錠剤嚥下障害かも!?」
実際のアセスメントシートP D Fダウンロード
ライタープロフィール
【西依見子】
食べることと生きる力をつなげるTaste&See 代表。慢性疾患看護専門看護師、摂食・嚥下障害看護認定看護師の資格を用い各施設へコンサルテーションを行っている。「食べたほうがいいのか、食べないほうがいいのか?」といった現場の疑問を解消すべく、スタッフが、口腔ケアを含めた「食べること」への理解を深めるサポートを提供。現在、『コンサルタントナースのスペシャリスト応援ブログ』というブログを配信中。
コンサルタントナースのスペシャリスト応援ブログ