オーストラリア最大の都市シドニーの公立病院で働く、私の一日について紹介します。 業務内容は、日本との大きな差はありません。基本的な看護業務は一緒です。システムや言葉の違いはありますが、看護は世界共通だと日々感じています。海外で看護師として働いてみたい方はぜひ参考にしてくださいね。
1.「3交代制」のシフト
夜勤は4週間ごとに約4回です。続けて4夜勤する人もいれば、2夜勤ずつ2週間に分けてする人もいます。もちろん、12時間ごとの2交代制の病棟もあります。
日勤 モーニングシフト | 準夜勤 アフタヌーンシフト | 夜勤 ナイトシフト |
7:00 ~ 15:45 | 13:30 ~ 22:15 | 21:30 ~ 7:30 |
8時間 | 8時間 | 10時間 |
2.ある日の日勤
7:00・勤務開始
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モーニングシフト(日勤)は開始時間が7時とかなり早いです。薄暗い中家を出るので、冬は通勤途中に日の出を見ることもあり、テンションが上がります。また、通勤ラッシュの前なので、混雑を避けられるのも嬉しいポイントです。ただ、なかなか目が覚めないので、病院の目の前のカフェでコーヒーを購入して出勤するのが日課です。
7:00-7:30・申し送り
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夜勤スタッフからの申し送りを受けます。日勤者はコーヒーや軽い朝食を食べながら申し送りを聞きます。A4サイズの「申し送り用紙」に、患者の基本的な情報が書いてあります。その情報をもとに、夜勤での出来事を口頭で申し送ります。日本と違って情報収集のための前残業はありません。
7:30・患者の振り分けとプラン作成
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リーダーが受け持ち患者を振り分けます。シドニーがあるニューサウスウェールズ州は、労働組合が強く看護師の数が十分確保され、患者と看護師の比率が4:1と決められています。ですので、患者をそれ以上持つことはほとんどありません。受け持ち患者が決まったら一日のプランを自分で立て、それぞれの患者に合わせたチェックリストを作ります。項目には、薬、バイタル測定、検査などを書き込み、忘れないように確認します。
8:00・朝の配薬
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パソコン付きの薬剤カートを準備し、患者の部屋に向かいます。電子カルテのオーダーを確認後、患者さんに配薬します。配膳はキッチンスタッフが行いますが、朝食セッティングが必要な場合は看護師が行います。 師長と教育係は8時出勤なので、リーダー看護師が簡単な申し送りを行います。新人の技術指導やチェックが必要な場合は、臨床教育担当が入ってサポートします。臨床教育担当(クリニカルエディケーター)は中堅以上の看護師が配属されますが、特に何年目以上の看護師という規定はありません。病棟の経験が長いことや卒後教育プログラムを受けていると有利です。日本では、主任看護師が教育担当も兼任していたので、仕事量が多く大変そうでした。しかし、オーストラリアの臨床教育担当は専任です。患者の受け持ちや病棟業務はなく、看護師と看護学生の指導が主な業務です。特に公立病院はこのような教育体制がとても充実しています。
9:00・バイタル測定とシャワー
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シャワー介助が必要な患者は看護師がシャワーを行います。病棟によっては看護助手(AIN: Assistant In Nursing )がいるので、清潔ケア・ベッドメイキングを手伝ってくれます。ちなみにAINは、バイタル測定、血糖測定、簡単な傷の処置ができます。看護学生がAINをやっている場合はさらに、心電図、ドレーン管理、看護記録まで可能。AINは看護師の指示のもと動きます。
10:00・モーニングティー
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日勤が7:00スタートなので、途中に15~20分ほどの短い休憩があります。その時間は、コーヒーを飲んだり、朝食を摂ったりする人がいます。 私は休憩室でゆっくりしていることが多いです。
10:30・医師からの点滴指示や検査オーダーを確認
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医師のラウンドが終わる頃に指示を確認します。点滴や抗生剤の変更、輸血のオーダーが主です。主に研修医と話すことが多いですが、皆聞きやすい雰囲気です。はじめの頃は、いつ話しかけていいか戸惑うこともありましたが、自分の仕事を進めたいので、いつでも話しかけてすぐに問題解決するようにしています。
11:00・カンファレンス
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師長と教育係へ自分の受け持ちの患者の情報共有を行います。当日の入退院や今後のプランについて共有します。医師や他職種の人が病棟にいる場合は、一緒に参加することがあります。
12:00・お昼の配薬
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血糖、インスリン、薬が必要な患者へ配薬します。
12:30・ランチ休憩
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交代で30分ずつランチに行きます。病院の近くにカフェや飲食店がたくさんあるので、外で食事をする人や休憩室で食事をする人など様々です。ランチを持参する人は、休憩室に電子レンジや食器があるので自由に使えます。また、コーヒー、紅茶、ミルク、ビスケットも常備されています。
13:30・申し送り
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準夜スタッフの勤務開始です。準夜への申し送りはベッドサイドで行います。患者さんのベットサイドで挨拶し、午前中にあったことを患者さんも交えて情報共有します。末梢ルートや中心静脈ライン、ドレーンなどがある場合は、準夜スタッフと一緒に確認します。
15:00・アフタヌーンティー
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準夜勤看護師が15~20分ほど休憩へ行きます。日勤看護師は記録を行い、自分の残りの仕事があれば行います。日によっては教育係からの勉強会が30分ほどある時もあります。勉強会は必ず勤務時間内で行われるのが決まりなので、日本との違いに最初は驚きました。勉強会の企画・運営も全て教育係が行います。
15:45・勤務終了
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日勤と準夜勤の時間が重なるので、日勤で残っている業務は準夜勤の人がカバーします。ですので、時間通りで帰ることが可能です。逆に残業すると、「何で残っているの?」「自分の仕事を時間通りに終わらせられなかったの?」とマイナスイメージを持たれるので、誰も残りません。
3.まとめ
オーストラリアでは、家族やプライベートの時間を大切にします。残業はほとんどなく、仕事はきっちり時間内で終わらせて帰るというのが鉄則。英語での仕事は今でも大変ですが、看護師としての仕事は日本と変わらないので、「英語が好き」「海外が好き」という方は、ぜひ海外看護師を目指してくださいね。
~ライタープロフィール~
【Nozomi】
群馬県出身。日豪で正看護師資格を持つ。日本では総合病院で3年働き、夢である海外で看護師になるためオーストラリアへ留学。初心者レベルから英語を始めて留学から3年半後に看護師登録が完了。現在はシドニー の公立病院で働きながら、自身の経験を活かし看護師のための留学サポートも行っている。今年は大学院にも通い始めて、がん看護のクリニカルナーススペシャリストを目指す。アンフェミエコラム読者の方にもぜひ海外留学に挑戦してほしいです。