「日中強い眠気を感じる」「集中力が途切れる」「いびきをかく」などの症状を指摘されたことはありませんか?
もしかしたら寝ている間に呼吸が止まってしまう睡眠時無呼吸症候群(SAS)かもしれません。実は日本人の約2~3%潜在患者がいると推定され、その数なんと300万人以上だとか。
無意識だからこそ知っておきたいSASについて学んでいきましょう。
1:睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?
睡眠時無呼吸症候群(SAS)を一言でいうと、眠っている間に無呼吸を繰り返す病態の総称です。定義では「10秒以上続く無呼吸が一晩の睡眠中(7時間)に30回以上、もしくは睡眠1時間あたり5回以上認められる場合」とあります。通常、睡眠は脳と身体を休ませるためのもの。
しかしSASの場合、眠っている間に何度も呼吸が止まるので、ぐっすり眠ることができません。無呼吸や低呼吸状態が続くと身体は酸素を供給するために心拍を速め、血圧をあげます。
そのため、眠っていても脳と身体は断片的に覚醒した状態になります。朝起きたときは疲労感が残り、日中の眠気が強く出るので、日常生活に影響を及ぼします。また、SASの本当の怖さは合併症です。
SASのない人と比べ、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、心房細動、糖尿病などのリスクが増大します。しかし、適切な治療を行うことで症状が改善され、合併症のリスクも軽減されることが分かっています。
2:睡眠時無呼吸症候群(SAS)の2大原因とおもな症状
SASの分類には「閉塞性」と「中枢性」があります。
閉塞性SASは、上気道の閉塞により呼吸が止まります。その原因にはアデノイドや扁桃肥大、首周りの脂肪などが障害となり気流が停止してしまうのです。
また、顎が小さい、舌が大きい、歯並びなどの形態的なことが関連しています。そのため、男女関係なく体型だけで判断することは難しいといえます。中枢性SASは、呼吸中枢の機能異常といわれ、SASのある患者さんの数%だそう。ほかにも両方が混在するものがあり、混在性SASといわれています。
断片的な睡眠は精神的にも影響を及ぼすため「うつ病」の関連もあると考えられています。
3:なんと交通事故は約7倍!
近年、交通事故や居眠り運転が原因となり、重大な事故を引き起こした痛ましいニュースが多く取り上げられています。事故を引き起こした運転手がSASだったということで社会的にも注目を浴びました。
しかし、SASが関与した事故は今でも後を絶ちません。
SASの患者さんは健常者より約7倍も交通事故の発生率が高いといわれています。
「日中の強い眠気」「居眠り」などの症状がある方はSASが隠れているかもしれません。
こんな症状が危険
朝起きたとき
- 口が乾く
- 頭痛がある
- よく寝た気がしない
- 寝起きが悪い
- 倦怠感がある
- 気分が沈む
寝ている時
- いびきがある
- 呼吸が止まる
- 息苦しさを感じる
- 目が覚める
- 寝汗をかく
- 息苦しさを感じる
4:SASの検査とは
まずは医療施設に受診し、生活の状況や症状について問診を行います。
その後、睡眠の状況について自宅で簡単に検査が行える簡易型検査を実施します。検査では眠っている間の呼吸状態やSPO2を装着することで、血中の酸素飽和度を測定し無呼吸や低呼吸の状態を知ることができます。簡易型検査で無呼吸低呼吸指数(AHI)が40未満の場合はより詳しい呼吸状態を知るために精密検査を実施します。
その場合、入院で精密型による入院検査が必要です。脳波や筋電図、眼球の動きなど、睡眠全体の状態を測定するポリソムグラフィー(PSG)検査を行います。また、AHI(※)が40以上の場合は即、診断され治療が開始されます。
※呼吸が浅くなったり、停止してしまったりする症状が1時間当たり何回起こっているか判定するための重症度があります。この数字を「無呼吸低呼吸指数(AHI)」といいます。
重症度 | 正常 | 軽症 | 中等度 | 重症 |
---|---|---|---|---|
1時間あたりの無呼吸・低呼吸回数 | 0~4回 | 5~14回 | 15~29回 | 30回以上 |
5:SASの治療とは
治療には「CPAP療法」「生活習慣の改善」「マウスピース」「外科的手術」があります。
おもに閉塞性SASの第一選択として用いられるのが「CPAP療法」です。マスクを介して鼻から空気を送り込むことで、閉塞している気道が押し広げられます。CPAPを使用するとほとんどの場合、当日からいびきが無くなり、日中の眠気が軽くなるといわれています。
ただし、SASの根治療法ではなく、対症療法です。そのため、治療を継続していかなければなりません。ちなみにCPAP導入には、AHI20以上が適応となります。
一方、SASが軽症の場合(AHI5~14)には、体重を減らす、飲酒の制限、禁煙などの生活改善が行われます。
また、歯科装具のマウスピースは、咽頭に適度な空間をつくることで症状の軽減が期待できます。外科的手術では扁桃肥大やアデノイドの除去手術が検討されます。とくに小児の閉塞性SASでは積極的に行われています。
6:まとめ
日中の眠気や疲労感のため、仕事に支障をきたしたり、車の運転中に居眠りをしてしまったり、社会的にも問題となっているSASは無意識だからこそ恐ろしい疾患です。
治療によって改善されその予後に期待が大きいので、ぜひ心当たりのある方は一度検査を行ってみてくださいね。
~ライタープロフィール~
【マヤ】ナースLab認定ライター
群馬県在住。看護師として働きながら、フリーライター、カメラマン、看護大学教員、介護講師、メディカルマーケティング、看護師ライター育成事業など、幅広く活動中。また、3人の子育て中に転職、復職経験をきっかけに女性のワークライフバランスや新たな働き方について講演、スピーチなどを行う。著書5冊、3児の母。
HP: mayanakazawa-nurse.jimdofree.com
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