「わかってる」でもできない患者さんへの支援のコツ

ナースライター 木嶋千枝
ナースライター 木嶋千枝
「わかってる」でもできない患者さんへの支援のコツ

自由・マイベース・やる気がない・自分勝手・・・そんな形容詞が当てはまる方への療養支援でゲンナリしてませんか?この記事では、ナースの大きな役割のひとつ療養支援について紹介します。療養支援のコツでみなさんも患者さんもHAPPYに!ぜひ、最後までお読みいただき皆さん自身が元気に現場に向かう力になったら嬉しいです。


頭で分かっても できなくて普通

・理解≠行動

みなさんは「やらなきゃ」と思いつつできなかった経験ってありますか?例えば、テスト勉強・ダイエット・運動。どんな人でも一度くらいあるかなって思います。完璧な人はいませんから。


・健康のためなら、行動して当たり前?

薬物療法・食事療法・運動療法...罹患に伴い、継続した治療が必要なため「生活の場=療養の場」になる方が増えています。再入院やリピート入院は、こちらへの衝撃が大きくガッカリしたり無力感を感じます。
しかし、人はAIロボットじゃないから分かっていても思うように行動できないことがある生き物なんです。


・人は変えられない

人を変えることはできません。
もし、あなたの担当の患者さんが変わったと感じたとしたら、それは「相手の気持ちや考えに影響する援助ができた」から。相手自身が何かを気づくことで、思考に変化をもたらし行動が変化します。
強制的指示での行動変容は、おそらく続きません。そのうえ最悪「やらされた」とマイナスの感情だけが残り、医療従事者全体への信頼が低下するリスクが高いですね。


人は変えられない

理論やモデル、先行研究

療養支援はフローレンス・ナイチンゲール『看護覚え書』にも触れられていて、他の多くの先人が取り組んできた課題ともいえます。例えば、保健信念モデル・保健行動相互作用モデル・ヘルス・プロモーションモデルなどが患者教育で役立つモデルではないでしょうか。
日本では岡美智代先生が書籍「行動変容を促す看護」(医学書院)も出版しています。糖尿病看護や透析看護だけでも「療養支援」に関連する数えきれない数の研究報告があります。全国、いえ、全世界のナース達があの手この手で療養支援の難しさに頭を悩ませて頑張っています。


行動変容を促す援助のコツ5選

では、どうしたら健康に近づける支援ができるのでしょうか。


①患者さんの「良くなりたい」気持ちを信じる

医療機関の受診、訪問看護の利用。これは、紛れもなく「生きたい」「良くなりたい」気持ちの裏付けです。そう思えない行動をとっていたとしたら、何か理由があるはずです。


②療養行動は目的ではない

「血圧を下げる」「今の状態を維持する」それがゴールですか?
違うはずです。したいことや手に入れたい何かがあるから療養するのです。大袈裟な表現ですが患者さんの「生きる目的」「健康になって何がしたいか」を明確にしましょう。


支援の例)体調が良くなったらどんなことしたいですか?どんな自分でいたいとか理想像ありますか?


③療養と生きる目的を関連づける

患者さんにとって生きる目的と療養は結び付きにくく、点と点。
例えば、「孫の成長を見届けたい」と願いながらも、塩分制限が全く行えない方。「そんなことしてたらお孫さんの成長見れなくなっちゃう」とナースの皆さんならばすぐわかること。しかし、患者さんにとって孫の成長を見届ける事と塩分制限は関係ない別件事案なんです。


支援の例)ご自分の健康状態がどうだったらお孫さんの成長を見届けられそうですか?そのために今できることってないですか?


療養行動は目的ではない

④点と点が結びついたら、行動目標を設定する

教科書の療養行動を100点として、最初から100点は目指しません。患者さんが少し頑張ればできそうなことを一緒に探して目標にします。成功体験を積み重ねて自己効力感を高めていくのです。したがって、患者さんが提示した目標の実行自信度が70%より下回っていたら目標ダウンを検討し、スモールステップを刻みましょう。


支援の例)味噌汁を今は1日3回飲んでるのを、まず朝と晩だけにするという目標ですね。次の外来まで1ヶ月あるので、1ヶ月毎日できそうを100%の自信度としたとき、何%位できそうですか?


⑤伴走者として

あなたにとって目標が低く「当たり前のこと」と思えることも必ず結果を確認し、達成できていたら一緒に喜び賞賛しましょう。「認めてもらえた」気持ちを得られ励みになります。


支援の例)Aさん、すごい!頑張りましたね!目標が達成できて私も嬉しいです。さすがですね~。今度はもう少し目標を高くしてみましょう!


まとめ

「病気だから療養をして当たり前」ではありません。
医療者の前では「患者」ですが、普通の生活者。血圧を正常に保つために生きているわけでも、血糖をコントロールするために生きてるわけでもありません。

療養は自分らしく健やかな時間を過ごすために不可欠な手段。また、生活そのものが療養であるため、あなたの思いやりある言葉が大きな力になるのです。今回紹介したコツを活かしながら、ナースとしての目的を見失なわないように支援していきましょう。

医療者はあくまでも支援者。患者さん自身が解決させるしかないのです。私たちと同じように仕事をし日常生活を送りつつ療養に取り組む方々のご苦労を汲み取ろうとするだけで、患者さんとの間に流れる空気感が変わります。

みなさんも頑張ったことを誰かが一緒に喜んでくれたり、賞賛してくれたら嬉しいですよね。慢性疾患を抱えている方は、生きているかぎり続く療養。患者さんも自分も責めないで肩の力をぬいて一緒に歩んでいきましょう。


~ライタープロフィール~

【木嶋千枝(きじまちえ)】ナースLab認定ライター
慢性疾患専門看護師 Abeby 代表/大誠会内田病院所属
NICU.心臓血管外科.整形外科.内科.回復期病棟を経験し、苦悩に寄り添う看護を目指して日本認定心理士を取得。2019年~子供も含めた足の教育事業Abebyをスタート。現、群馬大学臨床教授・日本慢性看護学会評議委員。

ブログ:https://gifoot.net/


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