個人防護具の中で最も頻繁に使用されるグローブ。自分と患者さんの防護、感染経路の遮断に大きく役立っています。
そんな普段何気なくつかっているグローブですが、実は素材ごとに特徴があります。
今回は医療用グローブについて少し深堀りして選択のポイントや着脱のタイミングについてご紹介します。
1.着用例と交換のタイミング
■着用例
・血液・体液・分泌物・排泄物・粘膜・創傷部へ接触する時
・汚染された物品や医療器材へ接触する時
・曝露の可能性がある作業時
(鋭利物を取り扱う時、ガーゼを交換する時、内視鏡を操作する時等)
・医療従事者の手に創傷、病変・炎症などがある時
■交換のタイミング
・患者ごと
・同じ患者でも会陰部など汚染した体部位から顔などの清潔な体部位へ手を移動させるとき
・汚染したとき
・破損やバリア機能が損なわれたとき
一般的に使用される医療用の手袋は全数が検査されている訳ではありません。
全数を検査すると工数と費用がかさむのである一定の不良品率を認めたうえで生産されています。
また、プラスチック手袋等で雑品をお使いの場合は基準がありません。
ピンホールの可能性があるのでグローブを外した後は手指衛生が必須です。
2.グローブの素材別特徴
病院で使用されるグローブの素材には大別すると3つの種類があります。
・天然ゴムラテックスグローブ
・ニトリルゴム(合成ゴム)グローブ
・プラスチックグローブ
素材 | 特長 | 主なアレルゲン |
---|---|---|
ラテックス (天然ゴム) |
強度、伸長性に優れフィット感が高く操作性が良い。 コストはやや高い。 |
ラテックス蛋白、 ガゼイン加硫促進剤 |
ニトリル (合成ゴム) |
穴あき等耐刺突強度に優れている。 またラテックス程ではないが伸長性も良好。 薬剤耐性も高い。 PVC程ではないがコストも比較的安価。 |
加硫促進剤 |
プラスチック (PVC、ポリ塩化ビニール) |
強度、伸長性等で劣るが、コストが安価なために、 最も多く使用される。 |
可塑剤 (DEHP:フタル酸ビス) |
処置のリスクや使用感、コストに応じて使い分けられているのが、現状だと思います。近年はニトリルゴム手袋が使用感も上がり、コストも下がってきているので使用量が増えています。
3.ゴム手袋によるアレルギー
自分や患者さんを守るために使用している手袋。でもその手袋によってつらい手湿疹やアレルギーを発症してしまうことがあります。毎日ゴム手袋を着用する医療従事者はアレルギーの発症リスクも一般の方よりはるかに高く、なかには重篤な症状によって、健康に被害をおよぼしたり仕事が続けられなくなる場合もあります。グローブによって引き起こされる接触皮膚炎には主に3つのタイプが考えられます。
■グローブによる接触皮膚炎
Ⅰ型(即時型)アレルギー:天然ゴムラテックスアレルギー、ガゼインアレルギー
天然ゴムラテックスに含まれる残留タンパク質、また安定剤として使用されるミルクガゼインに対する反応。 最初に接触してから5~30分という短時間に発症。主な皮膚症状として、かゆみや紅斑、じんましんなどがあげられます。また、全身症状として、気管支ぜんそくや重篤な場合にはアナフィラキシーショックで呼吸困難、血圧低下を起こす可能性があります。さらに、食物アレルギーの方でラテックスと交差抗原性をもつアボガド、バナナ、栗、キウイなどにアレルギーがある方は注意が必要です。
Ⅳ型(遅延型)アレルギー:化学物質アレルギー(加硫促進剤など)
ゴム手袋の製造工程中に使用される化学物質が、完成したゴム手袋に残留していることにより引き起こされる、特定のアレルゲンに対する反応です。接触後24時間~48時間後に発症します。主な症状として紅斑、腫れ、ひび、かゆみ、滲出、接触個所の皮膚の乾燥があげられます。重篤化はしにくいものの慢性化するととてもつらく、日常生活にも支障がでます。ゴム手袋によってⅣ型アレルギーを引き起こす化学物質のなかでも、ニトリルゴムにも使用される加硫促進剤が要因となる場合が多いとされています。
刺激性接触皮膚炎(非アレルギー反応)
グローブの着用による皮膚の閉塞や汗による蒸れなどの刺激によっておこる反応。発赤、乾燥、かゆみなどの症状を起こす場合があります。
アレルギーを治す事は非常に難しく時間と根気が必要です。ラテックスフリーや加硫促進剤フリーのゴム手袋が販売されていますので有害な症状と要因を理解して対処しましょう。
まとめ
医療現場になくてはならないグローブ。良い医療を行うためには、まず働くみなさんが健康で笑顔でいる事が大切だと思います。みなさんと患者さんをしっかり守るために、グローブを適切にご使用いただければ幸いです。
グローブの使用における留意点
・患者ごとに交換する。
・長時間使用して汗をかいた場合は交換する(毛穴の中の常在菌が浮いてくる)。
・手袋着用前には手指衛生を行う。
・汚染された手袋で、他の環境表面や物品に触れない。
・手袋を外すときには、汚染面を素手で触れないように注意する。
・手袋のピンホールや破損等により、使用者や他の従事者が感染する可能性があるため外した後は、すぐに手指衛生を行う。
・同一患者の一連のケア時でも汚染された部位を取り扱った後は必ず手袋を交換する。
・手袋をしたまま手指衛生を行わない(手袋の性能が破壊されてしまう)。
ライタープロフィール
【石鞍 信哉】
A.R.メディコム・インク・アジア・リミテッド(メディコムジャパン)学術部所属。
「Pride in Protection」をかかげる感染管理のグローバルカンパニーの社員として、日々製品の適正使用や正しい感染管理の啓発のためにセミナー活動を行っている。
趣味は昔はバイクや釣りなど。今は・・・。
https://www.medicom-japan.com/?product-cat=iryou_glove