「精神科って大変そう」「訪問するの、怖くない?」そう聞かれることが多かったのが精神科訪問看護でした。予想外の出来事があるのは事実ですが、利用者さんと過ごす時間は穏やかで癒されることも。今回は、精神科訪問看護のあるあるを7つご紹介します。
目次
・緊張しかない初めての訪問
訪問看護を心待ちにしている方もいれば、不満を抱えている方もいます。「訪問看護が退院の条件だったから」「症状は落ち着いているし、必要だと思っていない」と断られるケースもあります。そのため、初回の訪問はとても重要!丁寧な説明と対応で訪問看護が利用者さんの困りごとを解決するお手伝いをしていくのだと伝えます。
・環境整備はタイミングが大事
散らかっているからと看護師主導で掃除をしたり、片付けたりするのはNG!「ゴミ屋敷」状態となっているケースも少なくありませんが、勝手に私物に触られるのは誰だってイヤなもの。掃除をしたくても気力がなかったり、幻覚で掃除を禁止されたりしているケースもあります。まずは利用者さんの気持ちを確認します。
・ドタキャンや拒否はよくあること
訪問看護の時間を忘れられたり、希望のスタッフでないため居留守を使われたりすることもあります。それに「〇〇さんが良かった」と言われることもしばしば。ストレートに言われると傷つきますが、「今日は□□さんなんだね」と受け入れてくれる利用者さんもいて、その笑顔に癒されます。
・服薬指導は長期戦
精神科訪問看護では、服薬指導がとても大事。飲み忘れがないよう、一緒に服薬カレンダーにセットしたり残薬を確認したりしています。しかし1日置きに飲んだり、一部の薬を除いたりと独自のやり方で服薬管理をしている方もいます。「否定もせず肯定もせず」のスタンスで関わりながら、服薬指導のタイミングを図ります。
・会話ゼロなら趣味を深掘り!
お話好きな利用者さんがいる一方、会話は必要最低限でいいという方もいます。そのような場合は、一緒にテレビを観たりゲームをしたりして同じ空間で過ごせる仲になるよう努めます。そして利用者さんの言動や室内の様子から、興味のありそうなことを見つけ出して会話のネタにつなげます。囲碁やピアノの演奏など、利用者さんの意外な一面に驚かされることも多かったです。
・休憩スポットはみんなで共有
カフェや図書館、公園などトイレを借りられる場所はスタッフみんなで共有します。私はパン屋巡りにハマり、利用者さんに近所のオススメのパン屋さんを紹介していました。もちろん、体重は右肩上がり……。
・時にはアドレナリン全開
訪問の連絡の際に利用者さんの口調が攻撃的だったり支離滅裂だったりした場合は、複数のスタッフで訪問し、主治医に早めの報告をします。「死にたい」と強く訴えて刃物を持ち出されたり、スタッフに対して攻撃性の高い言動がみられたりした時こそ冷静な判断が必要です。どのように対応するのがベストなのかを、頭をフル回転させて考えます。
・まとめ
入院中とは異なる利用者さんの姿を、自分や世間の「普通」と比較したくなります。ですが、私たちの価値観を押し付けて生活サイクルを変えることは利用者さんにとって辛いものです。穏やかにいつも通りの毎日を過ごせているのか見守るのも精神科訪問看護の魅力のひとつ。ハプニングや自分と異なる価値観に動じないマインドは、今後の人生にも活かされますよ。
ライタープロフィール
【美橋サキ】ナースLab認定ライター
1988年生まれの沖縄県出身。大学病院、精神科病院などで10年勤務。ライフワークバランスの両立を模索する中で、看護師をしながらレストランダンサーやフードコーディネーターとして活動する。現在はフレンチレストランとクリニックに勤めながらWebライターをする日々。趣味は読書と美術鑑賞。
Twitter:https://twitter.com/satsulow
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