看護師あるある~地域包括ケア病棟編~

ナースライター 近藤涼子
ナースライター 近藤涼子
看護師あるある~地域包括ケア病棟編~

「地域包括ケアシステム」をご存じでしょうか。
地域と病院が連携し、住み慣れた地域で最後まで「その人らしい暮らし」ができるような支援やサポート体制のことを指します。
地域包括ケアシステムの構築が推進される中、病院にも地域包括ケア病棟が次々に開かれ、病院から地域への橋渡し的な役割を担っています。
今回はそんな地域包括ケア病棟で働く看護師のあるあるをご紹介します。


1.患者家族の考え方にジレンマを感じる

患者家族の考え方にジレンマを感じる

ご家族の状況にもよりますが、患者さん本人は「自宅に帰りたい」といった希望があっても、家族の事情で自宅退院が困難な場合はジレンマを感じます。カンファレンスで押し問答が起こる場面も。「私も仕事をしているし難しい…」「ちょっと家では見きれないから」などと本人の前で言い切られてしまうと看護師側が少し切なくなることもあります。


2.家族が限界まで頑張ってしまう

家族のことだからと過労で倒れるまで介護を続けたり、老々介護で限界ではないかと周囲が説得するも「もう少し大丈夫」と言ってみたり…。そういった家族は、訪問看護などの介護保険サービスを拒否する場合も多いものです。「この人が倒れてからずっと旅行を我慢しているのよね」などと言われると、何とかしてあげたいと感じてしまいます。
看護師から見て、「大丈夫かな?」と感じる場合はケースワーカーに介入してもらうこともあります。


3.患者さんや家族への指導の難しさを痛感する

地域包括ケア病棟では、自宅での療養に支障がないよう指導をしっかり行っています。インスリン注射を忘れてご飯を食べてしまう患者さんや、内服を飲み忘れてしまう患者さんなど、自宅でやるべきことが身に付いていないことも多いです。家族や患者さん本人の理解度によっては繰り返し説明が必要で、できるようになったのは退院日時ギリギリ…なんてことも。本人たちは「なんとかなるやろ」精神でどっしり構えているなか受け持ち看護師だけがオロオロしてしまいます。
特に家族への吸引指導が一番大変で、恐怖心からなかなかカテーテルを挿入できず、「うん、もうやめよう」とギブアップして施設へ方向転換した家族もいます。


4.ケアマネとの協力体制がカギ!

ケアマネさんとは、いつ環境が整うのか、現在患者さんに必要なケアの詳細、在宅で使用する社会資源の調整といった項目についてのやりとりが多くなります。
ケアマネさんはとにかく多くの仕事を抱えており、細かいところまで手が回らないこともあります。「◯◯さん△日に面談です」「□日に退院が決まりそうです」など、病院の状況をこまめに報告し、調整してほしい項目をケアマネさんと共有しておくと退院がスムーズに決まりますよ。


5.患者の退院に向けて、全力でサポート!

看護師は多様なニーズを一つひとつ拾い出し、関係各所と調整しながらニーズに合わせた看護を行う必要があります。車いす生活だった患者さんで、自宅に帰りたい一心でリハビリを頑張っている方がいました。セラピストだけでなく看護師ともリハビリを頑張り、最終的には杖で自宅退院できたときは、病棟一同感動の嵐でした!
中にはリハビリに乗り気ではない方がいましたが、歩行練習時に「以前に比べ足の運びがスムーズですね!」など看護師全員で声をかけることで、前向きにリハビリに取り組めるようになりました。積極的になりすぎて、十何往復も廊下を歩いていた時は思わず笑ってしまいました。


患者の退院に向けて、全力でサポート!

6.なかなか退院が決まらない患者が入院する

地域包括ケア病棟は入院期間が60日と決まっており、受け持ち看護師は、ICの日時設定、施設見学の状況確認など退院に必要な確認・調整を早くから行うよう心がけています。中には入院したその日に退院日が決まる方もいます。
また、他病棟から方向性や退院が決まらない患者さんが転棟してくるケースもあります。家族側が、「もっとリハビリをやれば必ず歩けるから」と退院を先延ばしにすることも。「介護認定調査の判定が来るまで入院させてほしい」なんていう要望もよく耳にします。


7.セラピストとの話し合いが不可欠!

リハビリの成果は今後の方向性を決める大切な要素の1つであり、特に自宅での生活を目指している方にとってはとても重要です。「今日の足の運びはどうでしたか?」「◯◯さんの歩行状況は?」などを確認した上で、退院までに設定した目標を適宜修正するのも看護師の役割です。特に移乗動作は、介護に直結するポイントですので、軽介助・中介助・全介助と細かく分けながら家族へ伝え、必要であれば家族への移乗指導をセラピストにお願いすることもあります。
そのため必然的にセラピストと話し合う機会が多くなり、自然と仲良くなります。


8.病院外との調整業務に気を遣う

地域包括ケア病棟の看護師は、他の病棟に比べ院外との調整業務が増えます。
連携先の病院との調整がかみ合わず、患者さんの退院が1日延びてしまったという事例がありました。他にも、自宅退院の時間をケアマネに伝え忘れ、その日の配食が間に合わない事例や、60日間に自宅の工事が終わらない方もいました。調整が遅れると退院時期がズレ、患者さんが不利益を被ることとなりかねません。スケジュールや退院調整の進行状況をしっかり確認する必要があります。


まとめ

地域包括ケア病棟では、退院に向けたさまざまな取り組みが行われています。
症状が落ち着いた回復期から退院調整までを一貫して見ることができるため、看護師としてやりがいのある部署です。
在宅ケアや退院調整に興味のある方はぜひ参考にしてくださいね。


ライタープロフィール

【近藤涼子】ナースLab認定ライター
総合病院から転職し、内科系クリニックに勤務。看護師として働きながらメディカルライターとしても活動。難病、神経内科、地域包括ケアなど数々の診療科での経験を持つ。

ナースLab:https://nurselab.net/home


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