もう怖くない!! 急変対応に必要なBLS(一次救命処置)

ナースライター 木原有紀子
ナースライター 木原有紀子
看護師あるある~日常で発揮してしまう看護力編~

病院で勤務していて一番怖いものといえば、患者さんの急な病態変化に遭遇したときですよね。とくに新人看護師さんは経験が少ない分、判断や行動に戸惑ってしまうこともあると思います。そんな時に自信をもってこれならできる!! と思える知識やスキルが身に付くと安心して突然の出来事にも落ち着いて対処できるようになるでしょう。そこで、今回はBLSインストラクターが医療の知識がない方でもできる急変対応をわかりやすくお伝えします。



急変対応に必要な知識

大切な命を繋ぐために必要な知識の一つとしてBLSがあります。BLSとは、Basic Life Supportの略で心臓や呼吸が止まった時に行う一次救命蘇生処置と言われています。これは、医療の知識がない方でも、誰もが特別な器具を使わなくてもできる心肺蘇生方法のひとつです。
倒れた人が心肺停止状態の場合、1分経過するごとに7~10%ずつ救命率が低下すると言われています。その場に居合わせた方が、このBLSの知識を知っているかいないかで、救える命が格段に増えることが明らかです。

実際に、私も救急外来での勤務時にBLSって本当に人を救えるんだなと改めて実感した事例があります。

ある日、心肺停止で運ばれてきた女性患者さんが運ばれてきました。蘇生治療の甲斐もあり、一命を取り止め、ICUで経過観察をしていました。倒れた背景を家族に確認してわかったのですが、その女性患者さんには小学校1年生になる息子さんがいました。倒れたお母さんを発見した息子さんが救急車を呼んで、到着するまでの間、心臓マッサージをし続けたということでした。

息子さんは入学してまもなく、学校の行事の中でBLS講習を経験していたそうで、何かよくわかならいけれど、お母さんに悪いことが起こっているから助けなきゃ!という思いで習ったことをそのまま行動に移していたのです。その後救急隊による効果的な蘇生を継続、病院搬送から治療にまで至りました。

このようにBLSという知識は、医療関係者だけでなく、すべての人々が知っておいて損はないものだと思います。今はBLSの講習を受けられる場所が全国各地にありますので、ぜひ一度体験してみてください。



実際に遭遇した際にみるポイント

実際に目の前で人が倒れたりする現場に遭遇すると、知識を知っていてもどう行動して良いか分からなくなってしまうし、自分にできるのか?という自信もないですよね。でもやっぱり、目の前で倒れている人がいたら助けたい!そう思うあなたに今からでもできるBLSのポイントをわかりやすくお伝えしていきます。

ポイントは“見る”“どう動くか”というこの2つに分けて考えていくとわかりやすいです。では早速みていきましょう!


見るポイントその1 ~意識がある?~

まずは反応を見ましょう。どんなふうに見たらいいのかというと、体のどこか一部でも動かしているのかということが大事になります。
例えば、手を振り払う仕草や首を動かす、顔をしかめるなどの動きです。この動きは、意識レベルの確認に用いられ、痛み刺激を加えた時の反応の一部と捉えられます。

なぜ動かないと緊急性が高いのでしょうか。
それは脳の働きに重要なポイントがあります。脳は酸素とブドウ糖を栄養源として働くことができます。しかし、何らかの要因でどちらか一方でも不足してしまうと脳は正常に働くことができなくなってしまうのです。酸素が減る要因として、呼吸をしていないもしくは、酸素を全身に送ることができなくなってしまっているということになります。

この状態は、生命を維持するためには非常に危険なサインとなります。そのため、反応がないということは生命を維持するための働きに問題が発生していることから、すぐに改善する必要があります。よって、最初に反応を見ることで、脳に酸素が送られている状態かがわかります。意識を確認するために、一番早いのは肩を叩きながら名前を呼ぶことです。



見るポイントその2 ~息をしている? 十分に血液を送れている?~

次にみるのは息をしているか(呼吸)、取り込んだ酸素をきちんと全身に送れているか(循環)というのが大切です。
なぜ確認する必要があるのでしょうか? それは、意識のところでもお伝えしたように、生命を維持するためにとっても重要だからです。では、どんなふうに確認すればいいの? と思いますよね。
次の図のように見ると一番わかりやすいと思います。



実際に遭遇した際にみるポイント

毎日の観察が大切です。まずは毎日いつでもどこでもいいので、患者さんに会いにいくときは、ベッド上での呼吸を観察してみてください。人の呼吸って本当に繊細です。あれ? これ動いてる? え? どうなの? とギリギリわからない場合がほとんどです。実際に会話しているとき、あーこの人胸膨らんでるなと感じる経験はありますか? おそらく着衣などで胸が膨らんでいるかどうかわかりにくいと思います。でも大丈夫です。毎日一分でも三十秒でもいいから、ベッドに臥床中の患者さんの呼吸による胸の動きを観察してください。必ずわずかな動きが見えてくるようになります。

動きのポイント

どんなところを観察するか理解できたら次は、どう行動するかについて説明していきます。


First Action:大声を出すもしくはナースコールを押す

動きのポイント

大きな声を出す理由は、人を集めたいからです。なぜ人を集める必要があるのでしょうか。急変時は、たくさんのことを瞬時に対応しなければなりません。心臓を押す、記録を書く、全体を指揮する、換気マスクを当てる、薬を準備するなど、一人では到底できません。急変対応で蘇生率を最大にあげるのはチームワークです。迷わず、怖がらず、声を出しましょう。とっさのフレーズなら「急変です!! すぐにきてください!」で十分だと思います。もし急変対応の経験があれば「急変です。緊急コールと救急カートとAED準備お願いします!」と言えればいいですね。


Next Action:胸を押す。

胸を押す

ここで重要なことは、押すだけでは有効な心臓マッサージにはならないということです。胸を押したら、完全に戻してまた押す。このことをしっかり覚えておいてください。なぜ胸を完全に戻す必要があるのでしょうか。

まずは、心臓をイメージしてみましょう。心臓は膨らんで萎んでを繰り返して血液の流れを作ります。繰り返しますが、血液を全身に送ることで生命を維持しています。頭の先から足の先まで一分一秒も絶やさず送るためには、血液を送るための圧が必要になります。心臓にたくさんの血液が入って来なければ、押してもからうち状態になります。そのため、胸を押したら完全に元に戻し、血液が心臓にたくさん入ってくるようにする必要があります。そして、たくさん入った血液を送るために、深く心臓を押すことが大切です。血液が大量に心臓に入ります。これを絶やさないように心臓を押すことが大事です。ベスト胸骨圧迫は少なくとも5cm、6cmを超えない深さです。



死戦期呼吸はすぐに心臓マッサージ

すぐに心肺蘇生処置が必要な呼吸に死戦期呼吸というのがあります。先ほど、息をしていれば蘇生不要とお話しましたが、この死戦期呼吸だけは違います。この呼吸は、呼んで字の如く死と戦っているときにする呼吸なので、すぐに心臓マッサージに移す必要があります。

どんな呼吸かというと、とにかく死から逃れようと酸素を大量に肺に取り込もうとするため、あえぐような呼吸もしくは、舌根沈下をしているためいびきに似た呼吸をします。
水に溺れた時に、口を大きく開けて息を吸うようなイメージと似ています。
あえぐような呼吸をしているときは、迷わず心臓マッサージを開始してください。



まとめ

今回は、急変時に必要なBLSの知識と技術をお届けしました。今回のBLSの内容は全部を網羅しておりません。最低限これだけは知っておいてほしいという部分のみを省略してお伝えいたしました。興味を持った方は、ぜひ一度BLSのテキストや講習などに挑戦してみてください。BLSは医療従事者だけでなく、一般の方でも対応可能です。一人でも多くの命を繋いでいくために、今回の知識は日頃から身近なものにしておきましょう。



ライタープロフィール

【木原有紀子】
看護師暦14年目
資格:急性・重症患者看護専門看護師、助産師、BLSインストラクター、県DMAT
大学病院救命救急センター所属後、東京女子医科大学大学院を修了。
現在は美容クリニックで社長秘書を務めながら、
専門看護師の活躍の場を広げる活動やキャリアコンサルタントとしての活動を推進中。

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