バスキュラーアクセス(シャント)管理の達人になろう!(基礎編)

ナースライター 喜瀬はるみ
ナースライター 喜瀬はるみ
バスキュラーアクセス(シャント)管理の達人になろう!(基礎編)

血液透析とは、血液を体から取り出し透析機械の中を通すことで、尿毒素物質や余分な水分を取り除き体に戻す治療法を言います。そのため血液の取り出し口と戻し口が必要になってきます。

この血液の出入り口をバスキュラーアクセスと言い、現在その大半を占めるのが内シャントです。1)内シャントは動脈と静脈を直接つなぎ、バイパス路を作成(シャント)することにより、本来動脈に流れる血液の一部を静脈に流し、静脈の血流を増加させるしくみのことを言います。

今回はバスキュラーアクセスの中でも内シャントの管理についてお話しいたします。

1)日本透析医学会統計調査:バスキュラーアクセスの現状2008年より、血液透析患者のバスキュラーアクセスの種類別のうち自己・人口血管内シャント合わせ96.8%



1. 内シャントの種類(自己血管内シャント・人工血管内シャント)

内シャントは動脈と静脈を直接つなぎ、バイパス路を作成するのですが、そのつなぐ血管によって種類が異なります。まずは自身の血管でつなぐものを自己血管内シャントAVF:arterio(動脈)venous(静脈)fistula(瘻孔)と言い、人工的に作成した血管でつないだものを人工血管内シャントAVG:arterio(動脈)venous(静脈)graft(グラフト)と言います。


内シャントの種類(自己血管内シャント・人工血管内シャント)

AVFは感染に伴う合併症を引き起こすリスクが低いため、第一選択とすることが推奨されています。AVGとは、適切な静脈が表在になく、自身の血管でつなぐことが不可能な場合に、人工血管を用いてシャント作成するものです。人工物を留置するためAVFに比べ血栓形成や感染症を引き起こすリスクが高いと言われています。それぞれの特徴を理解しておきましょう。



2. 内シャント音を聞き分けて異常の早期発見!

シャント音の観察は内シャント管理の基礎といっても過言ではありません。では、そもそもシャント音とは何なのでしょうか。簡潔に言うとシャント音とは動脈血が流れる時の血流音です。

しかし、シャント血管ではなく通常の動脈血管に聴診器を当ててみてください。拍動を感じる方はいるかもしれませんが血流音は聞こえないと思います。なぜシャント血管では血流音が聞こえるのでしょうか。

それは血管の構造の違いによるものです。もともと動脈血管は圧力の高い血液が流れるため壁が厚く音は漏れ聞こえない構造になっています。逆に静脈血流は圧力が低いため、動脈血管に比べ壁は薄く、ペラペラな構造になっており、また逆流を防ぐための弁が内膜に存在します。

先に述べたようにシャントとは、静脈血管に動脈血を流し入れているため、ペラペラな血管に今まで流れたことのない高圧な血液が流れるため音が漏れ聞こえ、また逆流弁にぶつかることで音が聞こえ始める、これがシャント音ということになります。

つぎにシャント音を聞き分けるには、まず正常と異常の違いについて理解する必要があります。以下の表に示したように正常なシャント音は、低音の連続音であると言われています。流れを川に例えると大きな変化がなくザーザーと絶え間なく流れているイメージです。
つぎに異常音ですが、異常音には2つの種類があります。
まずは狭窄音です。狭窄音とは血管内に狭いところがあり、そこを流れる際に音が高くなっている状態です。皆さんも風の強い日に少しだけ窓を開けるとヒューヒューと流れる高音のすきま風を聞いたことがあると思います。川で例えると川の途中で大きな岩がとどまってしまい、スムーズに流れていない状況です。
2つ目の異常音は拍動音です。これは、狭窄がさらに悪化した状態を示します。狭窄音の場合、狭い箇所はあっても流れは止まっていない状態ですが、拍動音の場合は一旦流れが止まり(断続)拍動に押されてやっと流れている状態です。川に例えると大きな岩が川の流れをせき止めてしまっているが、ダムの放流など強い圧力がかかった時だけ流れているイメージです。

この2つの共通点は狭窄が原因であるということです。
シャント狭窄では透析に必要な血液量が確保できず、進行すればシャント閉塞を招きます。シャントが閉塞すれば透析ができないなど、透析患者の予後にも大きく影響してきます。シャント音に関する正しい知識・技術を身につけ、異常の早期発見、早期治療につなげることが重要になってきます。


シャント音の違い

まとめ

今回は透析患者の内シャントの管理、その中でもシャント音についてお話ししました。しかし、正常か異常かということも必要ですが、一番大切なことは患者個々の通常を覚えておき、そこからどのように変化していくかを観察することです。

実際、シャント肢のどの部位も血流音が大きく、異常音が全く聞かれないといった患者は少ないです。この部位は音が弱い、狭窄音が聞こえるなど部位によって音が変わってきます。また当たり前ですが、血流音は患者の血圧や体調にも大きく影響を受けます。全身状態と合わせ患者の日々の変化を看ていくことが透析看護には重要となってきます。

次回はシャントの管理(実践編)として実際の管理法についてお話したいと思います。本記事が透析看護に日々尽力している皆さんのお役に立てれば幸いです。



ライタープロフィール

【喜瀬はるみ】
看護師経験34年。透析看護認定看護師。透析患者がその人らしく人生を全うできること、またそれを支える看護師を育成すべく、透析看護に関するセミナー講師活動中。


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