目からウロコのメンタルヘルス-事例から学ぶうつ病予防-その2

ナースライター 時任春江
ナースライター 時任春江
目からウロコのメンタルヘルス-事例から学ぶうつ病予防-その2

原因はひとつじゃない

「うつ病の原因は一つじゃなかった」そんな体験を寄せてくださった方がいらっしゃいます。今回は、「原因が重なっていたことがメンタルヘルス不調につながっていた」そう気づかれた方の体験です。ライフイベント法によるストレスランキング得点の活用方法、そしてうつ病の予防方法をご紹介します。



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目からウロコのメンタルヘルス-事例から学ぶうつ病予防-その1

1.原因は複数あった

「うつ病を患った原因は一つではありませんでした。職場内での移動、人員削減による過重労働、自分の病気、家族の死、子供の自立、そんなことが重なっていました。私がうつ病かなと思ったのは、病院には出勤するものの自分の部署に行くために階段を上っていくとなぜだか涙が出て言葉がうまく話せない 伝えられないことがあったからです。当時 悲しいわけでもないのに涙が出たり、話したいことがうまく話せないということがありました。感情がないわけではありませんが、嬉しいとか楽しいという感情は浮かんできません。反対に、ちょっとしたことに腹が立ったりすることがありました。複数のことが起きていましたが、相談することではないと思っていました。そんな私の様子を見て周りは休むように言いました。しかし私は、休んでも何も解決しない。私の仕事を誰がしてくれるの?と思っていました。」

この方以外にも、結婚、転居、転勤、部署異動が重なってうつ病を発症した、という方もいました。ストレス要因が複数あればあるほど、メンタルヘルス不調やうつ病を発症しやすくなります。人間関係が悪いからとかパワハラがあるから、そんなネガティブな要素だけではないのです。


原因は複数あった


2.ストレスランキングで客観的に自分の状態を確かめる

1年間のストレス量を予測する 「ライフイベント法」をご存知でしょうか。
ストレスは精神的・心理的なものだけではなく、暑さや 寒さも その要因に含まれます。ライフイベント法は、ここ1年の間に体験したストレス要因となる出来事をチェックし、その合計点を計算するものです。
1位から50位までのライフイベントをチェックして合計点を出すのですが、10位までをご紹介します。


1位 配偶者(夫・妻)や恋人の死 82.4
2位 親族の死 77.0
3位 親しい友人の死 76.1
4位 家族の病気、怪我 73.7
5位 離婚 72.3
6位 配偶者・恋人・子どもの暴力 71.6
7位 自分の病気やけが 71.4
8位 多忙による心身の過労 71.3
9位 失業・リストラ 70.8
10位 配偶者や恋人の浮気 69.4


【参考】 夏目誠、村田弘「ライフイベント法とストレス度測定」社会心理学研究/13 巻 (1997) 1号

体験談を寄せてくださった彼女の合計点は336.3でした。300点以上は翌年に健康障害が生じる危険性が80%なので、うつ病発症の原因になってしまったと思われます。

「35位妊娠(自分もしくは配偶者の)」「41位結婚」「43位知名度、社会的地位のアップ」「45位自分の昇進・昇格」「50位収入の増加」もストレスランキングに含まれます。喜ばしいことも重なると点数が増えますので要注意です。

ちなみに150点以上~300点未満は、50%の方が翌年に健康障害が生じる危険性があります。
「最近、なんだかやる気が起きない」と感じていた方が400点以上だったこともあり、客観的に自分自身がどのようなストレス状態にあるのかを判断する一つの目安になります。



3.ストレスランキングを高得点にしない方法

こうして考えると、ライフイベントが重ならないような過ごし方が大切です。しかし、自分でコントロールできるとは限りません。特に得点の高い「1位配偶者の死」「2位親族の死」「3位親しい友人の死」「4位家族の病気、怪我」「6位配偶者・恋人・子どもの暴力」などは自分で避けようと思っても避けられないライフイベントと言えます。

しかし、50位までには「23位転職」「28位就職・転職活動」「36位引越し」など時期を調節することで避けることができるものや、「34位食習慣の変化(過食、小食、節食、不規則)」「38位飲酒習慣の変化(量や頻度の増加)」など自分で調節できるものもあります。

「去年はいろんなことが重なったから、しばらくは現状維持を目指せるようにしよう」そんな気持ちで時間が経過するのを待つことが、不要なストレス要因を増やさないために重要です。



4.ストレスランキング得点が300点以上でも予防ができる

このストレスランキングで高得点でも自律神経に影響が出ない方もいます。
例えばアロマを日常的に使われる方や、ヨガなどを習っておられる方、毎日ジョギングなどをする方は、私が自律神経によるストレス測定を実施したデータから、健全に維持できている方が多いです。
自律神経は日常生活のちょっとしたことで健全に保てます。健康な時にこそ、ご自身の副交感神経を高められる方法を知っておくことが、身を守る上で大切です。


ストレスランキング得点が300点以上でも予防ができる


まとめ

ストレスランキング得点を知ることは、自分がどのようなストレス要因にさらされているのかを客観的に理解できます。また、自律神経を健全に維持できる方法を知っていればうつ病予防が可能になります。
昨年の1年を振り返り、自分自身の健康を維持するためのヒントにしていただきたいと思います。



ライタープロフィール

【時任春江】
総合病院で看護師として25年間勤務。
離職後、心拍変動解析によるストレス測定を取り入れた研修を行うようになった。2016年一般社団法人設立し、一般企業、医師会等からの研修や講演を受ける。「うつ病にさせないためのアドバイザー」を640人以上育成。また、看護師の市民活動団体One Nurseを運営している。

一般社団法人日本疲労メンテナンス協会ホームページ
市民活動団体One Nurseホームページ


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