冬の到来と共に、皮膚の乾燥は避けられない課題ですね。特に高齢者のスキンケアは、湿疹や掻きむしりからの感染やスキンテアなどのトラブルを予防するためにも重要です。
皮膚の保護機能
皮膚は、表面から表皮・真皮・皮下組織の3層構造になっています。表皮は外界からの異物の侵入や水分が体から逃げるのを防ぎます。
スキンケアの必要性
ドライスキンになると外界からの刺激をブロックできないばかりか、最近の研究では、真皮にあるかゆみに関わる知覚神経がより表皮まで伸びてきてしまい、かゆみを感じやすくなることが明らかになりました。掻きむしりや衣類などの刺激で、湿疹や小さな傷から細菌感染、スキンテアを起こしやすくなります。このようなトラブルを防止するために表皮を守るのがスキンケアと言えます。
ドライスキンのケア
洗い方
入浴は36~40℃のお湯で、洗浄剤は弱酸性のものを選びましょう。ちなみに、赤ちゃん石鹸は皮脂の多い乳児用で、アルカリ性が強くドライスキンには向きません。洗浄剤を泡立てて手のひらや柔らかなタオルで洗いましょう。こびりついた便や、亜鉛華軟膏などは無理にこすらず、オリーブオイルなどを塗って汚れを浮かせてから洗い流しましょう。
保湿剤の選び方
毎日続けられることが大切ですので、患者さんと相談しましょう。安価なものや、保険適用がある白色ワセリン(プロペト)やヘパリン類似物質、尿素クリームがお勧めです。背中など広い部位にはローションや泡状製剤が塗りやすく、乾燥の強い四肢は油性クリームや軟膏が適しています。
塗るタイミング
活動しはじめる朝と就寝前に塗れると良いです。清拭後や入浴後は肌を露出しており塗りやすいでしょう。
塗る量
ステロイド外用薬の塗布量にFTU(フィンガーチユニット)という目安があります。成人の人差し指の第一関節までに軟膏やクリームを乗せた量(約0.5g)を1FTUとし、手のひら2つ分の広さに塗布するという考えですが、保湿剤はこれよりやや多めの1.5倍くらいが良いとされます。塗った直後、ティッシュが貼りつくくらいのべっとり感です。体幹や下肢に塗るとしたら結構な量が必要になり、やはり安価であることも大事ですね。
塗り方
ステロイド外用薬は塗布、擦り込まずに伸ばし、保湿剤は手のひらでやさしく、よくなじませます。
塗る向きは横方向
より効果を得るコツがあります。外用薬は縦方向ではなく、横方向に塗り伸ばします。皮溝という横方向に走行する細かい溝は表皮がもっとも薄くなっており真皮へと吸収させやすいからです。
※マッサージとは別に考えます
塗る回数
ステロイドなどの外用薬は用法を守りましょう。保湿剤は1日1回以上、回数が多い方が効果は高くなります。
水分補給や室内環境・爪の長さを整える
適切な水分摂取、加湿器の使用や、エアコンの風が体に直接当たらないようにするなど環境も調整しましょう。手足の爪が伸びすぎていませんか? かゆい時は無意識に足を使って掻きむしることがありますので、足の爪もやすりで整えましょう。
いかがでしたでしょうか。看護師が適切なスキンケアを理解し実践することで、患者さんの生活の質を大きく向上させることができるでしょう。
参考文献
・パーフェクトガイド 病態・検査・治療・予防・ケアがすべてわかる!編集 内藤 亜由美、安部 正敏2019年9月5日 改訂版2版一刷発行
・公益社団法人 日本皮膚科学会ホームページ “皮膚科Q&A”
・持田ヘルスケア株式会社 ホームページ “乾燥肌の人にしてほしい入浴時のポイントと入浴後のスキンケア”
・マルホ株式会社ホームページ “もっと知ろう乾燥肌”
ライタープロフィール
【TOMOKO】ナースLab認定ライター
看護師歴27年・消化器内視鏡技師。病棟・外来・訪問看護・病院広報を経験。現在は訪問診療に従事。趣味はヨガ。休日は夫と電車旅行やSUPを楽しんでいます。在宅療養やACP、平穏死についても発信していきたいと考えています。
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