看護師あるある~訪問看護道中編~

ナースライター あおちゃん
ナースライター あおちゃん
看護師あるある~訪問看護道中編~

訪問看護は、看護師が利用者のお宅に訪問して看護を提供します。看護師の多くは、病院や施設など決まった場所で働くことが多いので、利用者のご自宅までの道中についてイメージが湧かないのではないでしょうか。訪問手段には、徒歩、原付自転車、車、公共交通機関があります。神戸市の中心部で働いた経験を持つ筆者が、訪問道中のあるあるについて集めてみました。



1. 駐車場に困る

訪問する範囲は、各ステーションによってさまざまです。地方では訪問距離が10キロ以上に及ぶ所もあるようです。車で往復一時間以上要することも珍しくありません。
車は天候や地形に左右されないため大変便利ですが、都心部では駐車場問題があります。駐車許可証を利用しますが、それでも止められない区域もあります。許可証は、対象となる所管の警察署ごとに発行されるのですが、私は訪問に遅れそうで慌てて別の区域のものを提示し、駐禁違反を取られた経験があります。その後、区の境界周辺への訪問では、隣接する2つの許可証を提示していました。時間にゆとりを持って行動することが大前提ですが、前の訪問が長引いてしまった、事故渋滞に巻き込まれるなどすると焦ってしまうのです。



2. 自転車は雨の日が大変

自転車は小回りが効き、駐車場や渋滞の心配がありません。程よい運動にもなるので健康的です。しかし天候の影響を大いに受けます。最も困るのは雨です。雨具を着用しますが、訪問先によっては雨具を脱ぐ場所がないことがあります。どんな手順で着脱すれば濡れずに済むのか、訪問中の自転車をできるだけ濡らさないようにしておくにはどうするか、など試行錯誤を繰り返しました。いいアイデアがあればスタッフ間で共有し、快適な訪問を目指していました。
また雨の日は点字ブロックや側溝の蓋で、タイヤがやたら滑り転倒しそうになります。そこでは、加速せず静かに通り過ぎるのが危険回避のコツです。



3. 電動自転車はバッテリー切れが怖い

山が多い神戸市は、山の中腹にも住宅があります。手が滑ってボールを落としたら、追いつけないほど加速するような斜度の所も多いです。そんな場所は道も細く、車で行くのも不安になります。そんな時の心強い味方が電動自転車です。アシストを最強にすれば、普通の自転車なら手押しでしか上れない坂も進めます。しかし、いいことばかりではありません。バッテリーが無くなると、自転車がとてつもなく重いのです。バッテリーを使い続けるとフル充電の容量も減ってくるので、満タンと安心して出発したら、帰りには残量メーターが点滅し出すこともありました。途中で残量が0になると泣きたくなります。できるだけ止まらないように、そして平地を求めて道を選びながら進んでいました。おかげで、どのルートを通れば坂道を回避できるか詳しくなりました。



4. 春や秋は自転車が最高

春から初夏、秋の訪問は自転車の季節です。春先は節分を機に、太陽の光が日々温かくなることを感じることができます。梅から始まりモクレン、サクラ、ツツジ、バラ、アジサイと、街中で咲く花を見られるのは訪問看護の楽しみのひとつです。特に川沿いの桜並木を駆け抜ける瞬間が最高でした。爽やかな風を身体全体で受け、自然のパワーでこころも体も軽くなります。秋はもみじや銀杏並木が楽しめます。日々長くなる影と夕焼け、そして冷たくなる風に冬の訪れを感じました。どこにどんな花が咲いているのか詳しくなり、余裕があると少し遠回りをしてリフレッシュしながら帰路につくこともありました。季節の移ろいに敏感になり、暮らしの中で自然が身近になります。

春や秋は自転車が最高

5. 徒歩や電車・バスを利用してお出かけ気分

近場なら徒歩、長距離で駅に近ければ交通機関も利用します。長距離では車より早いですし、渋滞や駐禁の心配もありません。時々電車が止まることはありますが。人工島と陸地を結ぶポートライナーなどでの移動は、神戸の中心部を一望できてプチ観光気分です。
街中を歩いて移動すると、花壇の花や、すれ違う乳幼児に癒やされます。ショーウインドーを眺めることで季節を感じられますし、新しいお店を発見することもありと、楽しみが多いです。何より健脚になれます。



6. 日焼け・熱中症・防寒の達人になる

車でも自転車でも徒歩でも、移動するときは季節ごとの対策が必要になります。夏は日焼け防止と熱中症対策です。UV効果のある長袖の上着、つばの広い防止、サングラス、手袋、首には冷却グッズです。最近はいろんなグッズが発売されていますが、私は手ぬぐいに小さな保冷剤を包んで首に巻いていました。帰り用の保冷剤は保冷バッグに入れ、忘れずに持ち歩きました。日焼け止めと汗ふきシートも夏の訪問看護では必須アイテムです。
冬は防寒具です。訪問先は暖房が効いているので調整がしやすいことが重要です。
入浴介助で多量の汗をかき、寒い中を自転車で帰る訪問では特に気を使いました。レッグウォーマーや巻スカートの防寒具は着脱しやすいので助かりました。季節を問わず登山用のアイテムが便利でした。

日焼け・熱中症・防寒の達人になる

7. 街のいたる所に利用者さんとの思い出がある

訪問看護はリハビリの一環として、利用者様やその後家族と外出する機会が少なくありません。近くの公園や神社への散歩、近隣のお店に買い物に行くこともありました。いろんなお話しを伺いながら出掛けます。訪問の道中にその場所を通ると、その時の記憶がふっと浮かんできます。
公園のベンチで桜を見ながら聞いた思い出話、スーパーにお昼ご飯を買いに行った時の日常会話などです。その思い出の利用者さんの多くは故人となられていますが、表情や声までが一瞬にして蘇ってきたとき、訪問看護っていいなあと、よく思いました。現場を離れた今でもそう思っています。



8. 移動時間にいろんな気持ちを整理できる

病院や施設で働いていると、勤務中は多くの業務を連続してこなす必要があるため、気持ちの切り替えが難しいことがあるかと思います。訪問看護でもいろいろな出来事が起こるのですが、移動の時間に気持ちの切り替えができます。もちろん自動車の運転中にあれこれ考えては危ないですが、好きなBGMやラジオを聞いてリフレッシュできます。自転車や徒歩では先に述べたように景色を楽しむことで気分転換ができます。一人になってフッと息を吐ける瞬間が小刻みにあることは、メンタルヘルスにとっていいように思います。



まとめ

訪問看護の需要が高まり、業務内容も広く知られるようになってきたと思います。そこで今回は訪問看護でしか味わうことがない訪問の道中について困難と楽しみの両面を集めてみました。訪問看護+αの楽しみをお伝えできていたら幸いです。



ライタープロフィール

【あおちゃん】ナースLab認定ライター
座右の銘は「毎日楽しく」。
目指すところは「笑顔を引き出す看護実践」。
紙屋克子氏の、「ナーシングバイオメカニクスに基づく自立のための生活支援技術」と黒岩恭子氏の「黒岩メソッド」を武器に活動中です。

ナースLabホームページ

メルマガ登録

おすすめ記事や最新情報をお届けします。

メルマガ登録

公式LINE

おすすめ記事や最新情報をお届けします。

友だち追加