
高齢社会が進む中、新しい高齢者施設が次々にオープンしていますね。
私は結婚、出産後に病院勤務をしていたのですが、仕事と家庭の両立に難しさを感じていました。そんな時、高齢者施設がオープンすることを知り、転職しました。その後も家庭の状況が変わるたびに働きやすい職場を探し、高齢者施設のオープニングに複数回関わってきました。
今回は病院勤務との違いを比較しながら高齢者施設オープニングの「看護師あるある」をお伝えします。
看護師の平均年齢が高い
高齢者施設に勤務する看護師の平均年齢は、病院勤務の方に比べて高めです。
オープニングスタッフは多めに募集されるのでそれを機会に、家庭環境や体力的な問題で夜勤は難しいが常勤として働きたい方、定年退職後のセカンドキャリアとしてという方も入職しています。私が初めて高齢者施設に入職した時は30代後半でしたが、一番若手でした。現在働いている施設には70代の現役看護師がいます。
ナースステーションの狭さに驚く
高齢者施設のナースステーションは医務室と言われることが多いです。
病院のナースステーションとは違い、利用者の居室から遠く、事務所の近くだったり、フロアの片隅にあったりします。配薬カートや薬保管用としての冷蔵庫、パソコンデスク、医療資材をしまう棚、カートやワゴンを置くので狭くなってしまいます。日中は看護師3~5人が常駐しているのですが同時に記録をつけるスペースはありません。
介護職の多さに圧倒される
高齢者施設なので当然介護職の方が多く、さらに施設長や相談員、ケアマネージャーや介護福祉士という方もいるので人数の差に圧倒されます。
職種によってケアに対する考え方や利用者さんの問題の捉え方が違うので最初は戸惑います。例えばおむつ交換の時に看護師は皮膚トラブルをおこさないことを優先に考えますが、介護職は漏れ防止を優先に考えて尿とりパッドを多めにあてていることがあります。また、言動がおちつかない利用者さんに抗精神病薬を頓用として使用する場合、看護師は先を予想して早めに使ったほうがよいと考えます。一方、介護職は内服後に転倒のリスクがあがるので最後の手段として使いたいと考えています。

そのため看護師の意見がうまく伝わらないこともありますが、いろんな考え方を知ることができるので勉強にもなります。
施設の設備に賛否!?
新築の建物なので中に入るとワクワクしますが、同時にオープン後の動線をシミュレーションすると賛否が出てきます。建築、設計の方のさまざまなご配慮で完成された施設ですが、実際にシミュレーションしてみると「この位置の手すりは握りにくいかも」「あの柱の向こう側が死角になりそう」などケアをした人でないと気づかないことが出てきます。

私は機械浴の動作確認で利用者役をやったことがあります。服を着たままでしたが、リフトの上げ下げの際に足がブラブラして不安定になる、リクライニングを上げると体が滑るなどの体験をして、職員間で意見交換しました。
足りない、または余る備品がある
オープニングなので備品も全て新しくそろえるのですがシミュレーションしていても過不足が出てきます。医療材料は、病院のようには費用を利用者に請求できないので必要最低限で安いものとなります。高めのドレッシング材などは使用が難しいので頭を悩ませるところです。また作業の効率化や整理収納に使用するトレイやカゴの過不足もあります。
サイズがそろっていても使い始めると「使いづらい」「ここにも何かほしい」という状況になります。利用者さんの少ないオープニング当初は、手の空いている職員が100円ショップに駆け込むということも。
マニュアルや手順作成に時間がかかる
法人の経営理念などを基に大枠のマニュアルや手順は決まっているかと思います。しかし、シミュレーションや場合によってはオープンして運用してからマニュアルや手順書を作成、変更します。オープニング当初は流動的なので自分の意見や経験を反映しやすいと思います。
まとめ
施設のオープニングというと大変なイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、作りあげていく楽しみややりがいもあります。最初から関わる事で働きやすさにも繋がると思います。「1人で新しい事を始めるのは大変だけど皆となら」と思う方は選択肢の1つとしてみてはいかがでしょうか。
ライタープロフィール
【やち】ナースLab認定ライター
臨床経験20年、泌尿器科、皮膚科・形成外科、脳神経外科、リハビリ科を経て現在高齢者施設に勤務中。2児の母。仕事と家庭を両立しながら認知症ケア専門士を取得。
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