みなさんは緩和ケアにどのようなイメージを持っていますか? 緩和ケアとは、がん患者さんの診断時から看取りを含む終末期まで関わるケアのこと。一般的にあまりポジティブなイメージはないかもしれません。「専門的な知識が難しそうで手を出しにくい」「何もできずつらい」という声もよく聞かれます。
実は緩和ケアで大事なのは看護の視点そのもので、すでに実践できていることも多いのです。今回、がん集学的治療病棟において緩和ケアの経験があり、認定看護師資格をとった筆者が緩和ケアの看護についてわかりやすくポイントをまとめてみました!
1.緩和ケアは看護そのもの
緩和ケアは、がん患者さんとその家族が抱える苦痛や不安を和らげるためのケアです。がん患者さんが直面する身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題をトータルペイン(全人的苦痛)として捉え、その方らしい生活の質を向上させるためにアプローチします。
患者さんとの日々の関わりから状態を観察し、必要なケアを提供していく、その一つひとつは基本的な手技に過ぎません。つまり、緩和ケアは看護の現場ですでに実践されているといえます。まずはいつもと変わらない看護を実直に提供していくことでよいのです。
2.できていることの評価を忘れずに
問題点を把握し対処していく看護師の特性か、できていることよりもできていないことに意識が向きがちです。「ケアしたいのに何もできない」と悩むことが多いものですが、本当にそうでしょうか? 緩和ケアにおける看護では、痛みや呼吸などの評価ツール、麻薬を使用する際の疼痛コントロ-ル、ターミナルに対するケアなど、特徴的なスキルになんとなく気をとられてしまいがち。しかし「患者さんに声をかけて、バイタルサインや状態を把握し、発熱に対してクーリングで対処した」ことも立派な緩和ケアにおける看護なのです。
患者さんに対して特別な関わりがなくても大丈夫! 日々実施していることも緩和ケアの一つであるため、忘れずに評価してくださいね。
3.できることからでOK!
そうは言っても、スキルアップしケアを充実させたい! と学びを深めている人もいるでしょう。Webで書籍を閲覧できたり講習を受けられたりできる今、緩和ケアの手技や症例も多く紹介されています。しかし、Webからさまざまな情報を取り入れようとしてうまくいかずに悩んだこともあるはずです。
「疼痛緩和のためにマッサージを提供する時間的余裕がない」
「アロマセラピーを実践できる人がいない」
など、さまざまな要因によって実施内容が制限されることもあるでしょう。
たとえ思い描いていたケアが実施できなかったとしても「できなかった」と落ち込みすぎる必要はありません。
「患者さんと会話している間に患部をさする」
「患者さんの好む香りの話をした」
といった看護ケアでも一歩前進です。
緩和ケアに必要なスキルや使用するツール、あらゆる基準は日々アップデートされています。すぐに取り組めることと取り組めないことがありますが、代替できるものはないか、今実施できるベストを探っていくことが大事です。
紹介される症例の多くは成果のあった事例が挙げられています。当然、期待される結果の出なかった事例もあるのだと認識しておきましょう。
4.緩和ケアに必要な2つのこと
緩和ケアに必要なことは「関心」と「根気」です。
① 関心
患者さんに関心があれば、観察やコミュニケーションから状態を把握し、アセスメントするなど看護の動機付けとなります。また看護に関心があれば、どう対応したらより良いケアを提供できるかと、スキルアップを図ることにもつながります。一つひとつの積み重ねが、あなたの周囲へも影響を及ぼし、いずれ組織の意識を変えていく力にもなるのです。
② 根気
経時的にアプローチする緩和ケアでは、患者さんの問題がすべて解消されることはありません。一つの症状を緩和できても再燃することや、別の症状が出現することがあるためです。当たり前ですが、教科書通りの症例は稀です。まったく同じ症例はないかもしれません。どんな対症療法を施しても次々と症状や不安が出てくる状況に、どれだけ根気強く向き合えるかが重要です。
まとめ
病棟から外来、さらには病院から福祉施設や在宅へと看護を提供する場が広がっている緩和ケア。さまざまな領域で「その方らしい生活の質や生き方とは何か」を見つめていかなければなりません。緩和ケアのイメージや専門的なスキルばかりが先走ってしまい難しく感じることもありますが、一つひとつのケアはいつもの看護でよいことを忘れないで欲しいものです。できることから試行錯誤を続けていくと、必ずスキルは身についてきます。
患者さんや患者さんを取り巻く環境、何よりも看護に関心を持ち、根気強く緩和ケアを続けていきましょう!
ライタープロフィール
【ふじエミ】ナースLab認定ライター
元緩和ケア認定看護師。SCU、がん集学的治療病棟、外来化学療法センター、住宅型有料老人ホーム。三児の母。がん看護のサポートを目指しパーソナルカラーアナリスト取得後、訪問看護やアピアランスケアを勉強中。
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