「楽しいな」「みんな笑顔で気持ちがいいな」と感じながら働けることは、すごく幸せですよね。職場に行くのが楽しくなり、仕事のやりがい、生きがいにもなります。
私が経験した老人保健施設での認知症ケアはとても楽しく、笑顔溢れる瞬間がたくさん。職員同士のコミュニケーションが活発で、それぞれが楽しく仕事に取り組んでいます。業務量は多く大変さもありますが、それでも毎日仕事に行くのが楽しみでした。この記事では、一見大変そうな認知症ケアを、なぜ楽しみながらできているのか、そのポイントを解説します。
一人ひとりに合わせたオーダーメイドのケア
職場のスタッフはみな、利用者さんのことをとても大切に思っています。利用者さんの生い立ちや性格、好み、癖、安心してもらうための方法などを良く理解しています。利用者さんがどんな人生を送ってきたか、どんなことを生き甲斐にしてきたかーー。じっくりお話を伺う中で、ヒントをたくさん教えていただくことも少なくありません。こうした対話の中から、利用者さんに合ったオーダーメイドのケアを見つけ出していくのです。
困り事はチャンス!ポジティブに変換する
利用者さんに安心して過ごしてほしい、楽しんでほしい、笑顔が見たい、喜んでほしい。そんな気持ちで日々接しているので、自然と明るい雰囲気や前向きな声かけができているのだと思います。
利用者さんが困った行動をとった時、利用者さんの行動に対して、良くないと分かっていてもイライラしたり怒ったりしていませんか? ポジティブに捉えて作業療法やリハビリを取り入れながら、安全な生活環境を整えることも大切です。
例えば、帰宅願望による不安が強い利用者さんには、まずは声かけして対話の中から不安になる原因を見つけ出します。不安になる時間を減らせるように、体操やレクリエーションの時間を設けたり、タオルやエプロンをたたむなど一緒に作業したりしています。
トイレの便器で手を洗ってしまう方には、とがめず「こちらに良い石鹸がありますよ」と洗面台にご案内するとすんなり受け入れてくださったことも。

また出口を探し求めて徘徊する方には、お話ししながら廊下をぐるっと一緒に歩きます。そして席にご案内して水分を摂っていただく頃には、不安が落ち着くことが多いものです。
筋力低下で歩行が不安定でも何度もトイレに行き、転倒のリスクが高い方には、トイレ後に「ちょっとお散歩しましょうか」と伝え、見守りながら一緒に歩行することもあります。
このように、利用者さんの困った行動に遭遇したら、対話や様子から不安な原因を汲み取るようにしましょう。その原因が理解できると、どんな話題や気持ちを切り替える方法が良いか見いだせるでしょう。時には昔話をしたり自分の人生相談に乗ってもらったり...。そうしているうちに、初めに訴えていた不安や不穏が落ち着いてくることが多いのです。
身体のケアで心身ともにリラックス
お風呂や着替え、爪切り、フットケア、スキンケアなどのケアは、気持ちの切り替えやリラックスに効果的。
「綺麗になったわ、ありがとう」
「着替えたら気持ちがスッキリしたわ」
「とても良いお湯だったね」
と笑顔になってくださると、私たちもとても嬉しく、やりがいも感じますよね。
利用者さんが笑顔になるためにできること...。小さなことに思うかもしれませんが、天気の良い日にはカーテンを開け、換気をして、日向で日光浴をしながらお話をする。そんなことの積み重ねが、実は重要なのです。

また、身体を整えるだけでなく、感性を刺激する工夫も有効です。歌がとても上手い方には、襟元にピンマイクをつけ、歌っていただくこともあります。フロアにBGMが響き、いつもと違った雰囲気になるだけで、歌う方だけでなく周りの利用者さんもスタッフも楽しい気持ちになれます。自然と拍手が上がります。
楽しさや喜び、笑顔は幸せに生きる活力
利用者さんが笑顔になると、フロアの雰囲気が明るくなります。スタッフが笑顔で利用者さんのケアができると、利用者さんも安心して笑顔で過ごせます。笑顔や安心は連鎖します。利用者さん同士の会話も、明るい楽しい話題に切り替わるでしょう。そうなると好循環しかありませんね。私はこの職場で働けて幸せだなと感じています。
Happyや笑顔を一番身近な家庭へも
私は、家庭では盛り上げ下手で感情表現が苦手なため、なかなかみんなを笑顔にすることができません。仕事は楽しいものの体力的な疲れもあり、ホッと息を抜くために家庭では完全なオフモードになってしまいます。看護師の私と家庭の私は、たぶん別人格。職場でできていることを家庭でもできたらな...と日々考えています。しかし、実際はなかなか行動に移せていません。施設に勤め、認知症ケアに携わり、家族の大切さや有り難さ、距離感、多様性を改めて考え直しました。
みなさんにも日々体験している認知症ケアを見つめ直し、自分の家族との在り方やコミュニケーションの方法にも活用してもらえたらと思います。
ライタープロフィール
【kumi】ナースLab認定ライター
急性期病棟、外来、訪問看護、施設勤務経験あり。現場で働きながらライター活動を行う。スキンケア、ハンド、フットケアが好きで楽しみ。家族ケア、精神的ケアの勉強、実践中。
看護師による看護師のためのwebメディア「ナースの人生アレンジ」




