近年、高齢者の増加とともに認知症の患者数が増え、有病率も高くなっています。高齢患者さんと接する中で「私は最近忘れっぽい。認知症になったらどうしよう……」などと不安をつぶやかれる場面はありませんか?これまでの認知症治療薬は、認知症初期から使用できる内服薬が選択されてきました。一方、最近注目を集めているのは、アルツハイマー型認知症の「ごく初期(軽度)」の段階を対象とした新しい根本治療薬です。米国で開発された新薬「レカネマブ(レケンビ)」が2023年12月に発売。さらに2024年11月には「ドナネマブ(ケサンラ)」も登場し、日本でも相次いで使用可能となっています。
今回はこの新薬についてわかりやすく解説します。
1. 「レカネマブ(レケンビ)、ドナネマブ(ケサンラ)」はどんな薬?
レカネマブ(レケンビ)とドナネマブ(ケサンラ)の違いは、結合するアミロイドβのかたまり(凝集体)が異なる点にあります。レカネマブは沈着が始まる段階のアミロイド斑に、ドナネマブはすでに脳に沈着したアミロイド斑に、それぞれ効率よく結合して除去すると言われています。
では、それぞれの薬剤の特徴を詳しく見ていきましょう。
レカネマブとは……
レカネマブ(レケンビ)は点滴静注剤です。病気の原因となる脳内のアミロイドβ(プロトフィブリルやアミロイド斑)に結合し、除去する働きがあります。こうして、脳の中のアミロイドβが減り、病気の進み方が緩やかになると考えられています。投与期間は2週間に1回、原則18カ月までです。しかし、有効性や安全性の評価に係る対応を行うと、継続投与も可能となります。海外を含む研究では、18カ月間治療を受けた方は、受けなかった方よりも症状の進み方が27%遅くなったと報告されています。
ドナネマブとは……
ドナネマブ(ケサンラ)は、脳に沈着してからしばらく時間が経ち「ピログルタミル化」という目印のついたアミロイド斑に選択的に結合し取り除きます。投与方法は、レケンビと同様の点滴静注剤で、4週間に1回、原則18カ月までとなっています。
2. どんな人が治療を受けることができるの?
レカネマブ(レケンビ)の対象は、アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症患者さん(MMSEスコア22点以上、CDR0.5または1)です。エピソード記憶障害が示唆され、無症候でアミロイドβ病理を示唆する所見のみが確認できた者及び中等度以上のアルツハイマー病による認知症患者は治療を受けることはできません。その他にも、「薬剤成分に対し重篤な過敏症の既往歴がある」「投与開始前に血管原性脳浮腫、脳出血が認められる」場合は該当しません。これらの条件を満たし、アミロイドPET又は脳脊髄液(CSF)検査でアミロイドβ病理を示唆する所見が確認された50~90歳の方が投与対象となります。
ドナネマブ(ケサンラ)は、記憶障害が6か月以上にわたって徐々に進行しており、治療導入期間又はスクリーニング時のMMSEスコアが20~28である方が対象です。またアミロイドPET検査によるアミロイドプラークの確認、およびタウPET検査による脳内タウ蓄積の確認が必要です。さらに、脳出血がないなどの基準を満たす、60歳以上85歳以下の早期アルツハイマー病(AD)患者が投与対象となります。
3. 治療を受けることでのメリットとデメリットはなに?
メリットは、軽度認知障害(MCI)の状態で治療を受けることができる点です。治療により、脳の中に溜まっていたアミロイドβが顕著に減少します。記憶や見当識、判断力と問題解決能力、地域社会活動、家庭生活および趣味・関心、介護状況を含む全般臨床症状(CDR-SBという指標で評価)の悪化が27%抑制された、という研究結果もあります。
デメリットは、適応しなければ治療を受けることができず、2週に1回または4週に1回の治療のため通院する必要がある点です。また、治療費は保険適用になったものの、金額はやや高額のままです。
まとめ
認知症の進行に伴い「日常生活に支障が出る」「精神症状の悪化により自宅での生活が困難となる」「住み慣れた地域・自宅で過ごすことができなくなる」などの状況も少なくありません。症状の進行により患者さん自身の不安感が出現するだけでなく、同時に家族も将来への不安や介護が増えていくことによる心身の疲弊を感じます。そのため、家族関係が悪くなることも珍しくありません。
今回ご紹介した新薬、レカネマブ(レケンビ)とドナネマブ(ケサンラ)は、条件が適応すれば、MCI・早期AD患者さんに使用が可能であり、日常生活に支障が出る前に治療が行えます。そのため、早期に発見し治療を受けることで住み慣れた自宅・地域でより長く過ごすことができると思います。私たち看護師としての役割は、認知機能低下による症状に早期に気づき、もの忘れ外来への受診につなぐことだと思います。認知症の進行を抑制できることで、患者さん本人だけでなく、ご家族の不安を軽減することも期待できるのではないでしょうか。
参考文献
・厚生労働省ホームページ,2)抗アミロイドβ抗体薬について,最適使用推進ガイドライン(レカネマブ(遺伝子組み換え)),最適使用推進ガイドライン(ドナネマブ(遺伝子組み換え))
・国立長寿医療研究センターホームページ
ライタープロフィール
【味喜知子】特定医療法人 谷田会 谷田病院 認知症看護認定看護師
急性期病院での経験を経て、谷田病院へ入職。現在は地域包括ケア病棟で勤務しながら、もの忘れ外来や認知症ケアチームの活動にも携わる。認知症看護認定看護師として、患者さん一人ひとりの背景を丁寧に汲み取る看護を追求している。
谷田病院看護部:https://yatsuda-recruit.jp/nurse




