「赤ちゃんと関わる仕事がしたい」「命の現場で看護を学びたい」そう考えてNICUに興味を持つ方もいるのではないでしょうか。 一方でやや特殊な環境でもあるため「実際はどんな現場なの?」「忙しさや大変さは?」と疑問に感じる方もいるはずです。今回はNICUで勤務した私の経験を踏まえ、NICUで働く看護師のリアルな働き方とやりがいについてご紹介します。
1.NICUって静かでラク?現実とのギャップ
NICUは「静かで落ち着いた環境=ゆったり働けそう」と思われることがあります。しかし、実際はその静けさの中に強い緊張感がある職場です。多くのNICUでは、赤ちゃんへの刺激を最小限にするため、照明を落として静かな環境が保たれています。一方でスタッフは、常にモニター波形やアラームに意識を向け小さな変化でもすぐ対応できるよう、常に気を張っている状態です。
私は実際に、緊張感を強く実感した経験があります。哺乳が順調に進んでいた赤ちゃんのアラームが、あるとき突然鳴り響きました。その赤ちゃんを見ると、呼吸が止まり口唇は真っ青。慌てて背中をさすると、呼吸は回復。排気とともに落ち着き、大事には至りませんでした。しかし私にとってあの光景は今でも忘れられません。「NICUは、一般病棟以上にいつ何が起こってもおかしくない環境」と痛感し、本当に肝が冷える思いでした。こうした急変に備え、私たちは常に「静けさ」の裏にある微細なサインを見逃さないようにしています。
また環境面だけでなく、感染についても非常に厳しく管理されています。なぜなら、医療者側の関わりが原因で感染が拡大し、命への影響を高めてしまうリスクがあるからです。免疫力の低い赤ちゃんを守るため、徹底した手洗いやガウンテクニックなどの標準予防策の遵守が求められます。このようにNICUは、常に緊張感と隣り合わせの現場です。
2.NICUってどんなところ?
NICUは、早産児や低出生体重児、疾患を持って生まれた新生児を対象とした集中治療室です。NICU内は保育器や人工呼吸器などの医療機器に囲まれ、温度や湿度、感染対策も厳密に管理されています。さらに、赤ちゃんにストレスを与えないよう光や音、触れ方といった「刺激を最小限にすること」が何よりも大切です。採血や処置の場面でも、赤ちゃんへの負担をいかに減らすかを常に考えながらケアするのが特徴です。こうした環境管理に加え、NICUでの看護には非常に繊細な管理が求められます。例えば、毎日の「哺乳」もその一つです。母乳は冷凍保存されたものを解凍して使用しますが、解凍後は24時間以内に与える、一度加温したものは短時間で破棄するという厳しいルールがあります。
赤ちゃんの飲むタイミングや量を見極めることは難しいもの。「少なすぎても多すぎてもいけない」絶妙な量を調整するのは、私にとって至難の業でした。さらに母乳の取り違えは絶対に許されないため、哺乳瓶の名前と赤ちゃんの照合を何度も繰り返す確認作業は、NICU看護師にとって最も神経を使う瞬間の一つといえます。
3.どんな赤ちゃんがいるの?

NICUには早産児や呼吸障害、先天性疾患を持つ赤ちゃんなど、さまざまな背景を持つ新生児が入院しています。中には体重が1000g未満、場合によっては500g台の赤ちゃんに関わることもあり、触れること一つにも細やかな配慮が必要です。経鼻栄養チューブやモニターを固定するテープの種類を考慮したり貼り方を工夫したり、リムーバーを使ったりなど皮膚への負担を考えることが求められます。
4.看護師の配置は?
厚生労働省の定めで、NICUの看護職員配置は3対1とされています。新生児の状態に応じて1人の看護師が1~3人程度を受け持ち、担当の赤ちゃんが重症の場合は1対1に近い体制になることもあります。一般病棟と比べて担当する人数が少なく「楽そう」と思われるかもしれません。しかし、一人ひとりに丁寧に関われる一方で、小さな赤ちゃんゆえに些細なことが命取りになりかねません。判断やケアの責任も大きく、特に当直医のみの夜勤帯は緊張が増します。
5.看護のやりがいは?
NICUでのやりがいは、1g、1滴の管理が「命の輝き」に直結する手応えです。管だらけだった赤ちゃんが自分の力で呼吸し、体重を増やしていく姿。それは「看護の力」と「生命の力」が共鳴する瞬間でもあります。私が印象に残っているのは、人工呼吸器管理が必要だった赤ちゃんが、少しずつ自発呼吸が安定し、呼吸管理が軽減されたことでカンガルーケアができるようになった場面です。初めてご両親が赤ちゃんを胸に抱いた瞬間、涙を流しながらわが子を見つめる姿を目の当たりにし「この瞬間のために関わってきたんだ」と感じました。この光景は今でも忘れられません。また、我が子を直視できなかったご両親が、少しずつおむつ替えやケアに携わり、確かな「絆」を紡いでいく。プロセスを一番近くで支えられるのは、NICU看護師だけの特権です。こうした瞬間があるからこそ、NICUでの看護に大きなやりがいを感じるわけです。
6.こんな方におすすめ
□ 細かな変化に気づくのが得意な人
NICUではわずかな呼吸の変化や皮膚の色、モニターの波形など、小さなサインを見逃さない観察力が求められます。日々の積み重ねの中で観察力を高めていきたい方に向いています。
□ 丁寧で繊細なケアが好きな人
新生児は体がとても小さく、一つひとつのケアに細やかな配慮が必要です。スピードよりも「丁寧さ」や「やさしさ」を大切にしたい方に適しています。
□ 急性期の判断力も身につけたい人
出生直後や状態変化時には、急性期のようなスピード感と判断力が求められる場面もあります。落ち着いた環境の中でも、いざというときに対応できる力を身につけたい方におすすめです。
□ 赤ちゃんとそのご家族に寄り添って看護したい人
NICUでは「医師は第二のお父さん、看護師は第二のお母さん」と言われることもあり、日常的に赤ちゃんの成長を支える役割を担います。ご家族の不安に寄り添いながら関わることにやりがいを感じる方に向いています。
□ 成長を見守る看護にやりがいを感じる人
小さく生まれた赤ちゃんが少しずつ成長していく過程を間近で見守れるのはNICUならではの魅力です。命の成長に関わる実感を得たい方に適しています。
まとめ
NICUは、静かな環境の中で高い緊張感が求められる現場です。繊細で丁寧な看護が必要であり、責任の重さを感じる場面もありますが、その分、命の成長を支えるやりがいも大きい職場です。丁寧に向き合って看護したい方にとって、NICUは大きな学びと経験が得られる環境といえるでしょう。
ライタープロフィール
【はまなす】ナースLab認定ライター
新潟県出身。2000年卒業し看護師生活をスタート。兄も利用していた小児療育施設での10年勤務を経て現在はクリニックで勤務中。
2022年からライター活動と看護の二足の草鞋を履きつつ、今はクリニックのマニュアル改定をしながら日々駆けずり回っています。
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