怒りのコントロールでおなじみの「アンガーマネジメント」。近年は企業や教育、子育てなど様々な場所で活用されています。日々忙しい業務に追われ、ストレスの多い環境下ではちょっとしたことが苛立ちに変わりがち。そこで今回、感情に振り回されないためのトレーニング法を全3回に渡りご紹介していきます。
1.アンガーマネジメントの考えかた
アンガーマネジメントとは、「怒り」という感情を論理的に捉え、実践的な対処法を提示するものです。精神論ではないので、練習をすることで誰にでも習得できる技術になります。
また、アンガーマネジメントを行うと「人生をハードモードからイージーモードに変える」とも言われています。怒りの感情をコントロールすることで、ストレスを軽減し自分も周囲の人間も大事にすることができます。自身の感情の器も大きくする考えなので、感情の器も日々のコントロールで大きくなり「怒りの奴隷」から抜け出すことができます。
2.怒りの感情を受け入れコントロールする
ささいなことでイライラしたり、ムカッとしたりする経験は誰にでもありますよね。しかし、この怒りに任せて思わず発してしまった一言で、今まで築いてきた人間関係や信頼関係を崩してしまうことがあります。
怒りは人間にとって自然な感情ですが、ストレスも強く悩みの多い感情ともいえます。だからこそこの怒りをコントロールできればより生きやすく、人間関係も円滑にすることが可能です。
とくにナースは、患者さんやその家族、医師をはじめとした他職種との連携の中で、いろいろな感情に揺さぶられます。しかし、自分から湧き出てきた感情は無理に我慢せず、感情の背景を知り、受け入れることが大切です。まずは後述にある怒りのパターンについて見ていきましょう。
3.あなたはどんなパターン?怒りの傾向とその対処法
あなたの怒りのタイプはどれになるでしょうか?基本的な怒りの傾向とそれを収める7つの対症療法をご紹介します。
1)つい衝動的にカッとなりやすい複数のイライラが重なったときなどに、ついカッとなって怒ってしまう
・対処法このタイプは反射的に攻撃的な発言をしやすく、後から後悔してしまうタイプが多いです。そのため、カッとなりそうなときには「1、2、3…」とゆっくり6秒数えて怒りをやり過ごします。6秒数えながら、反射的な言動をやめるトレーニングを行います。
なぜ6秒かというと、怒りの感情のピークは長くて6秒と言われているからです。更におすすめなのは、深呼吸しながら、心を無にすることを意識して6秒待つ。これをすることで怒りはよりコントロールしやすくなります。
2)過去にあった出来事を怒ってしまう
・対処法このタイプは過去の出来事や感情に捉われがちです。このようなときには、怒りとは関係のない目の前にあるものをじっくり観察することで怒りをコントロールできます。例えばテーブルに置いてあるノートやペン、お茶など、無機質なものをじっくりと観察してみましょう。また、未来や過去ではなく「今」に意識を向けることで怒りが膨らむのを防ぐことができます。
3)怒りに支配され、冷静な対応ができない
・対処法怒りの6秒ピークの時間、自分の頭のなかで自身の動作を実況することで冷静になることができます。「今、消しゴムに手が伸びました」「なぜこの出来事が起きてしまったのか、これからどうすればリカバリーできるか」など、野球中継のように自身で実況することで冷静な自分を取り戻せます。
4)怒りの尺度を知る
・対処法自分の怒りの程度がわからないと、相手へ自分の気持ちをうまく伝えることもできません。まずは自身の怒りのレベルを10段階で数値化しましょう。看護でいうとNRSスケールのように自身の怒りのレベルを客観的に評価します。
怒りのスケールで評価することで得られるメリットは下記になります。
①怒りを客観的に見られるため、冷静になれる
②レベル別の対策が取りやすくなる
③気づいてなかった怒り、押し込めてしまっていた感情に気がつく
④自分の怒りの傾向を知ることができる
5)トラブルが起きたとき、ショックで頭が真っ白になる
・対処法一度、その場を離れることで気持ちが落ち着きます。スポーツの試合中のタイムも同じ役割があると考えられています。一旦その場のトラブルから退避し、わずかな時間に声を掛け合うだけでも、試合の流れを変えるきっかけになります。このようにトラブルが起きた場合でも、タイムアウト時間をつくることで良い人間関係を保つことができるといわれています。
6)急な予定変更で、つい怒ってしまう
・対処法自分と会話することで気持ちをコントロールしましょう。「大丈夫」「なんとかなる」「落ち着いて」など、自分に声をかけることで落ち着くことができます。
7)怒りにずっと捉われてしまう
・対処法原因を考えるとかえって怒りが増幅してしまうので、思考停止が有効です。たとえば、頭のなかで「真っ白な紙」をイメージして、他のことは考えないようにします。また、イライラした出来事を心のなかでギュッギュと握りつぶし、ひとつずつゴミ箱に捨てるイメージをする。そうすることで心が軽くなります。
4.看護師あるあるイライラ例
1)緊急入院や処置が重なり、余裕がなくイライラしてしまう
・対処法「大丈夫」「なんとかなる」と自分に言い聞かせつつ、周囲へ自分の状況を伝えます。ほかのスタッフにフォローしてもらえるのか相談しましょう。今日中ではない業務は、後日できないか検討し、優先順位をつけます。
2)職場の人間関係にイライラしてしまう
・対処法ナースは多職種との連携が必須です。報告・連絡・相談業務のやり取りで、イライラすることが出てきます。そんな時は、6秒数えながら深呼吸し、自身の実況も行いましょう。
3)教育する場面で価値観の違いにイライラしてしまう
・対処法指導は業務と並行して行うので、ときどき余裕がなくイライラしてしまいます。自分と相手との価値観が違うことをきちんと念頭に置いたうえで、6秒カウントをしましょう。そして、自分がどの価値観の違いに怒りを感じてしまうのか、自分との対話を行い明確にすることで怒りのキーポイントを知ることができます。
5.まとめ
アンガーマネジメントは自分の感情とうまく付き合うためのスキルです。看護師の仕事は感情に振り回されることが多く、心身ともに疲弊してしまいがち。その状態から抜け出すためにも、自分の怒りのパターンを知り、対処法を身につけましょう。きっと気持ちが軽くなるはずです。
【優 かおる】ナースLab認定ライター
福岡県出身のママナース。企業提携コーチ、ライター、予防医療事業なども行う。 仕事で悩んでいた時にコーチングに出会い、人生観が変わる。 自分らしい生きかた・働きかたの支援として副業サポートも行っている。 自身の活動をブログやメルマガにて発信中。
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