メディアでたびたび目にするようになったHSP。日本語では“繊細な人”や““敏感すぎる人”と訳されます。一見すると“神経質な人”という印象ですが、そうではありません。HSPは、「音や臭いを敏感に感じる」「物事を深くとらえる」などの“気質”を持つ人を指す言葉です。
また、HSPは医学的な診断名ではありません。しかし、社会的認知が広がっているのは、誰にも理解されない感覚に悩む人が多いからと言えるでしょう。
筆者自身がHSPという考え方を知って悩みが軽くなり、人間関係がラクになった経験とともにお伝えします。
目次
1.HSPってどんな人?
HSPとはHighly Sensitive Personの略です。アメリカの心理学者であるエレイン・アーロン博士が1996年に出版した『ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ』の中で提唱しています。日本でもHSPが広く認知されるようになりました。
HSPとは敏感な感覚を持ち、小さな出来事や刺激に反応することでストレスを抱えやすいと言われています。アーロン博士によると、5人に1人がHSPであると言われています。
HSPに見られる傾向とは!?
職場や友達の不機嫌や体調不良にすぐ気づき、自分も影響される。
気が付くと考え事をしていて時間が経ってしまうことがよくある。
映画や芸術に感動しやすく涙もろい。
たくさんのことを同時にこなすのは苦手。
誰かに見られながら作業すると緊張して実力を発揮できない。
相手がこうして欲しいという思いを言葉がなくても察知する。
光や音、臭いに敏感で、眠れなかったりひどく疲れたりする。
時々一人きりになりたいと強く思う、一人の時間がないと耐えられない。
※これは一般的に言われているHSPの傾向をまとめたものです。HSPは診断名ではありません。
2.そこまで深く考えちゃう?HSPのとらえ方
周囲の人の機嫌を敏感に察知してしまうHSP。職場に機嫌の悪い人がいると、自分が原因ではなくてもどんよりと落ち込んでしまいます。相手の感情や疲れ、周囲の雰囲気を自分のことのように感じてしまうと言われています。
楽しいはずの飲み会も、気を使いすぎて疲れてしまうこともしばしば。お開きになった後も、「あの時、どうすれば良かったのかな?」とぐるぐると考え込み、ストレスを抱えてしまう方はいませんか?
3.音、臭い、光などの感覚が敏感
HSPは音や光や臭いといった感覚に敏感だと言われています。
人ごみのざわざわした気配も苦手なので、電車に乗るととても疲れてしまう方も。休日は出かけてリフレッシュするよりも、家で一人の時間を取るほうがリラックスできることが多いようです。
眠る時のエアコンの風の音や家電製品の電源の小さな灯りが気になるという人もいます。
私の場合ですが、寝室に遮光カーテンを使っています。それでも隙間から漏れる街灯の明かりが気になるため、アイマスクを使っています。
HSPはサングラスや耳栓で視覚や聴覚を一時的に遮断することで、休息が得られやすいそうです。
4.石橋を叩き壊して渡れなくなる?!筆者のHSPぶりを披露!
私は自分のことをHSPの可能性が高いと思っています。熟慮しすぎて決断が遅くなるところにその傾向がよく表れています。
例えば、友人が「テーマパークに遊びに行こう」と提案したとします。それに対して、「楽しそう!行こう行こう」と即座に手を挙げる人は行動力がありますよね。
しかし私は違います。「スケジュール確認しないと…後から断るわけにはいかないし、まだ返事はできない」「〇〇さんはアトラクション系の乗り物苦手みたいだったから別の場所がいいのでは」とあれこれ考えます。
他にも天候や交通手段、参加者同士の関係など、いろいろなことを考えて返信に時間がかかります。返事を迷っているうちに機会を逃してしまった、という残念なこともよくありました。
5.自分を見つめなおして繊細さを活かそう
①考え方のクセを知る
私はHSPを知ったことで、「物事を複雑に考えてしまうのは私だけではない」という安心感がありました。そこで「考えすぎることは悪いことではない」と認識を変えました。
まずは自分を認めた上で、一旦考えることをやめ、「私はどうしたいのか」を自分に問いかけるようにしています。時には頭で考えるよりも自分の気持ちに従ってみることで、一歩踏み出すことができるかもしれません。
②相手との違いを知る手がかりにする
「考えすぎないで」と言われても自然に考え込んでしまうHSP。まずは一人で悩まず、考えている過程を言葉にして相手に伝えます。そうすることで、自分の心配事を相手に理解してもらえます。また、一緒に解決策を考えてもらえることもできます。
コミュニケーションを通して、相手が実際に何を思っていたのかを知ると、自分が考えていたことが杞憂だったということがあるかも知れません。
勇気を出して自分の考えを周りに伝えていくことで、人間関係がグッと良くなっていきます。
③自分の長所として仕事に活かす
HSPは物事を深く多方面から考えることができます。多くの人があまり気にしないような些細な出来事についても長く考え続ける傾向があります。
共感性が高いため、看護師やカウンセラー、教師、クリエイターといった職業に向いていると言われています。周りの細かい変化に敏感に気づくので、マネジメントや管理職に向いているという説も。
HSP傾向を持つ看護師は、患者さんの痛みや苦しさに深く共感できるのではないでしょうか?この強みを活かすとさらによいケアができそうですね。
まとめ
HSPは治すものではなく活かすものだと思っています。できたら自分の個性として輝かせていきたいですよね。まずは自分の傾向を知り、周りの人と違いを認め合うことが大切だと言われています。
※今回、経験談も交えてご紹介させていただきましたが、まだ確立されていない部分が多く一概にははっきり言えないことが多くありますのでご了承ください。
~ライタープロフィール~
【秦さきよ】ナースLab認定ライター
1980年生まれ。看護師・保健師。糖尿病内科、血液透析室、特定保健指導を経験。現在は看護非常勤講師を務めるかたわら、ライターとして活動中。日々の生活に欠かせないものはヨガ。
ブログ:https://ameblo.jp/hatahata-books/