排便最新ケア!「排便ー4日目の下剤 そして下痢」を改善しませんか?

ナースライター 浦田克美
ナースライター 浦田克美
排便最新ケア!「排便ー4日目の下剤 そして下痢」を改善しませんか?

 「この患者さん、便出てないけどイレウスになったらどうするの?」

先輩看護師の言葉に怯えて下剤を投与したら下痢の大洪水。患者さんの便で汚れた衣類を交換しながら「たくさん出て良かったですね」と声をかける場面。
果たして、このケアは患者さんにとってHappyだったのでしょうか?


私は過去に便秘の種類に合わせた排便ケアで、ケア時間を約1/10に削減できた経験から多くを学びました。
今回は、日常的な慢性便秘症や下剤の種類について述べていきます。


1.排便ー4日は経過観察のタイムリミット

慢性便秘症は人口の約30%が生涯で経験する1)と言われるほど一般的です。4日以上便が出ないなんて当たり前という方も多いのではないでしょうか。

しかし看護師にとって、4日目は経過観察のタイムリミットです。

食物は摂取後72時間かけて排泄されるという生理機能が、その根拠です。確かに間違いではありませんが、環境やストレスで排便間隔が変化することも事実。逆にバリウム検査後は4日も待たずにケア介入した方が良いですね。以上のことから看護師が安心して経過観察するためにも、患者さん一人ひとりの便秘を見極めることが重要です。

実は、慢性便秘症に関する研究は近年急増しています。2019年に発表された「慢性便秘症患者は非便秘者と比べて死亡率が12%高くなる、2種類以上の下剤の内服は死亡率を上昇させる」1)といった報告は、便秘に対する認識を転換させる起爆剤となりました。

日本でも「慢性便秘症診療ガイドライン2017」が発刊、約30年以上の時を経て次々と新薬が販売されました。最近では、エコーで便秘の種類を推測する看護師も増えてきました。


2.便の位置を見透かす新兵器

ところで下剤投与後に快便の患者さんとしぶり腹で下痢する患者さん、何が違うのでしょうか?それは、便秘の種類です。

ここでは癌や腸管自体が問題となる器質性便秘は除き、一般的な機能性便秘について述べます。

便秘の定義は"本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出でいない状態"2)です。

つまり多量の下痢が出ても本人が快適に排便できたと感じなければ便秘の改善には繋がりません。これを踏まえて、便秘の種類を深掘っていきましょう。

機能性便秘は、排便回数減少型便秘排出困難型便秘の2種類があります。
排便回数減少型は、大腸内の便が交通渋滞となっている、もしくは食欲低下で便が少ないために発生します。一方、排出困難型は、便が直腸や肛門近くにあるけど硬い、もしくは腹圧がかけられないなどが原因です。


便の位置を見透かす新兵器

前者であれば、下剤を投与することで快便が期待できます。しかし後者は、肛門近くまで降りて来た便をどのように排出させるかが課題です。それに気づかず刺激性下剤(センナ・ラキソベロンなど)を投与すると腸蠕動が促進し大腸の便汁が下痢となって排泄され、しぶり腹となります。つまり、排出困難型便秘なのに刺激性下剤を投与するから下痢の大洪水になるのです。


排出困難型便秘

さあ、ここまで来たら便がどの位置にあるのかを知りたい!と思いませんか?


その新兵器がエコーです。 今は、コードレスのプローブとスマートフォンを使ってベッドサイドで簡単に使用できるようになりました。ひと昔前の聴診器のように医師だけでなく看護師も観察目的で使用できる時代です。

エコーを使えば、便が停滞している位置、硬さや量なども可視化できます。便がなければ、下剤は不要。摘便や浣腸などのケア後に残便の有無をエコーで確認すれば次回のおむつ交換はひと安心。ケア時間に限りのある訪問看護の現場では、オススメのアイテムです。


3. 「THE下剤」の新旧交代

下剤選びは医師の仕事ですが、快適な排便ケアは看護師の役割です。ここでは看護師が最低限知っておきたい下剤について述べていきます。


まず、一般的な下剤の種類は2つ。便を柔らかくする浸透性下剤と大腸の動きを促進させる刺激性下剤です。

前者はエビデンスレベル及び推奨度が最高位2)です。厳密な薬効は異なりますが、2012年から続々と新薬が販売されました。便秘の種類に合わせてきめ細やかに選択できる幅が広がったと言えます。将来この種類の下剤たちが覇権を制すことになるでしょう。

一方、まだ「THE 下剤」に君臨しているのは後者です。刺激性下剤は、大腸に鞭を打って便を移送するため、徐々に腸の蠕動が麻痺してくるのが怖いところ。いつからか、下剤量が増え便秘と下痢を繰り返す悪循環に至ります。まさに下剤中毒。しかしこれは、私達医療者にも責任の一端があることを忘れないようにしたいものです。


便を柔らかくする下剤

4.まとめ

慢性便秘症は古今東西とても一般的ですが、死亡率と関連があると報告されたのは最近です。そんな古くて新しい分野だからこそ、今がスタートライン。

下痢の大洪水にケア時間を奪われながら、便が出れば安心という時代は終わりです。ー4日目という時間軸に捉われず、便の有無、停滞している位置、硬さを観察し、患者さんにとっても看護師にとってもWIN-WINの排便ケアを提供していきましょう。

この記事がそのお役に立てば幸いです。そして、看護分野のエコーの可能性については次回排尿ケアでも触れていきます。
では、またお会いしましょう。


引用参考文献

1)Keiichi Sumida,1,2,3 Miklos Z. Molnar,1,4 Praveen K Potukuchi.Constipation and risk of death and cardiovascular events. Atherosclerosis,2019,281巻,p114-120 . https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6399019/ (アクセス日2021/12/26)


2)日本消化器病学会関連研究会慢性便秘の診断・治療研究会編:慢性便秘症診療ガイドライン2017.南江堂,東京,2017


~ライタープロフィール~

【浦田克美】ナースLab認定ライター
看護師経験25年。皮膚・排泄ケア認定看護師、特定看護師(創傷管理分野)、おむつフィッターの資格を取得。褥瘡ケアと仲間作りを目的に毎月YouTube LIVEで情報発信中。

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