呼吸器内科と聞いて、皆さんはどのようなイメージを持っていますか? 呼吸器内科では、感染症治療や肺がんの化学療法といった内科的治療を主に看護します。慢性期病棟なので急変が少ない穏やかなイメージ、患者さんの疾患が多岐に渡るため大変そうなイメージ、そもそも注目したことがないなど、さまざまかと思います。今回は、呼吸器内科病棟で日々奮闘する看護師が思わず「あるある」と言ってしまう、仕事内容や患者さんとの心温まるエピソードについて紹介します。
目次
1.酸素ボンベの残量不足は、先輩の逆鱗に触れる
呼吸器内科の患者さんは酸素吸入をしている人が多いため、移動時には、酸素ボンベを準備します。急いでいる時や忙しい時に限って、酸素の残量が足りない時があります。使用後に残量不足のボンベを交換せずに誰かが放置した結果、すぐに使用できる酸素流量計と接続した酸素ボンベが一つもない時は、本当にイラっとします。酸素ボンベ使用後に酸素の残量が足りない時は、必ずボンベの交換をしましょう。
2.もっと知って!呼吸器内科のこと
所属科を聞かれて「呼吸器内科です」と答えると、8割程度の人が一瞬固まり、話が広がらずに気まずい雰囲気になることがあります。テレビドラマでも、原作は呼吸器内科が舞台だったのに、循環器内科に替えられて放送されてがっかりしてしまうこともありました。こんなに一生懸命働いているのに「もう少し興味持ってよ」と思うことはあります。
3.酸素チューブさばきは職人技
酸素吸入をしている患者さんは、部屋では移動距離に応じた長い酸素チューブを繋いで過ごしています。よく折れ曲がったり、絡まったりするので、看護師は毎日チューブを綺麗にまとめて、酸素投与不足になることを防いでいます。まるで職人のように酸素チューブさばけるようになるため、家でホースや紐をまとめる時にも役立っています。
4.血ガス採血 緊張する採取後処理
呼吸の状態や体内の酸塩基平衡を調べる血ガス採血は、呼吸器内科で多い処置の1つです。血ガス採血の介助で、採血後の検体の取り扱いに緊張した経験はないでしょうか。特に、夜勤明けなど疲れが溜まっている時は、手先がおぼつかず、フィルターキャップを付けた際、シリンジの内筒(押し子)を押し過ぎて検体に空気を混入してしまわないかとハラハラしています。
5.布団の中から入れ歯を発見
少しの動作でも息苦しさがある患者さんは、枕元に生活に必要な物を置いていることが多いです。布団をめくるとお箸や入れ歯まで出てきたことがありました。ベッドをギャッジアップすると、物が雪崩のように落ちてくるのはよくあることです。息苦しさを誘発させないために、患者さんの希望に合わせてベッド周りを環境整備しています。
6.SpO2 70%台でも平気な患者さん
呼吸器内科の患者さんは、息苦しいことに慣れてしまって、SpO2値が70%台を示していても平気で過ごしていることがあります。アラームで何かあったのかと急いで駆けつけると、食事中で鼻カヌレが少しずれていたということはよくあります。状態の悪化を防ぐためにも、看護師がSpO2の低値に慣れないよう注意が必要です。
7.煙草!? ちょっと待った!
肺疾患の治療では、禁煙は必須ですが、部屋で煙草を見つけてしまうことは時々あります。酸素吸入をしながら煙草をくわえようとしている患者さんを発見した時は、心臓が止まる思いをしました。酸素に引火していたらと思うと想像を絶します。
8.小児のネブライザー吸入での失敗エピソードがある
小児はネブライザー吸入で治療をすることが多いです。吸入が怖くて泣き出してしまう子もいますが、そんな時は、寝ているタイミングを見計らって吸入すると上手くいきます。でも、吸入薬の準備をしているときに子どもが起きてしまったり、寝返りでネブライザーが届かなくなってしまったり……相手が子どもになると一筋縄ではいかないことがたくさんあります。
9.せん妄高齢者と夜の病棟探検
誤嚥性肺炎の高齢者が多く入院してくる呼吸器内科では、せん妄への看護も必要です。「家に帰る」と夜中に起きてしまう患者さんは少なくありません。そんなときは、夜の病棟探検スタートです。一緒に歩いていると段々と落ち着いてきて、人生の心得を話して下さることも……。混乱している時は大変ですが、いろんなスタッフが毎日その患者さんに関わっているので、退院されてからも思い出話によく登場します。
まとめ
呼吸器内科のことを知って頂けましたでしょうか? 疾患も年齢も幅広いため、たくさん勉強が必要な病棟です。しかし、一度壊れたら再生しない肺疾患の患者さんが入院する病棟だからこそ、長期的に患者さんと関わることができます。長く関わった患者さんに、一人の看護師として認めてもらえた時の嬉しさはひとしおです。呼吸器内科の魅力が少しでも伝わっていれば幸いです。
ライタープロフィール
【西村明香(にしむら・あすか)】ナースLab認定ライター
看護師・保健師。大学を卒業後、総合病院で勤務し、呼吸器内科・婦人科・小児科・訪問看護を経験。現在は、自身の治療のため休職中。今後は自分を大切にしながら仕事と治療の両立を目指している。モットーは「私と関わる全ての人、そして私自身も笑って過ごせるような看護をすること」
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