患者さんが求めるニーズを把握し適切なサービスを提供するためには、多職種連携は欠かせません。しかし、連携のための十分な時間が確保できず多職種との関係構築の難しさに直面したり、コミュニケーションのとりにくさで困ったりした経験はありませんか。ここでは、訪問看護師として働く筆者が自身の経験をもとに多職種での連携で大事にしたい3つのポイントを紹介します。
1.気をつけるべきコミュニケーションの壁
看護師同士のコミュニケーションで普段何気なく使っている用語が多職種には伝わらなかったという経験はありませんか。
筆者はヘルパーさんへケア内容の変更を伝えるとき、
「◯◯さん、本日血圧高く入浴からBB(ベッドバス)に切り替えました」
と報告をしたときに、
「BBってなんですか?」
と聞かれたことがあります。
看護師同士では当たり前のように使っている言葉だったので、うっかり使用してしまいました。このときは相手が言葉の意味を確認してくれたのでよかったですが、相手が聞き返すことをせず、誤った解釈をしてしまうこともあるでしょう。
せっかく連絡、報告しても相手に正確に伝わらなければ意味がありません。多職種とコミュニケーションをとるとき、相手に伝わる言葉かどうかを考える必要があります。
2.相手の名前を覚えてより良い関係づくり
在宅の現場ではさまざまな職種が1人の患者さんに関わっていますが、訪問する曜日や時間帯はそれぞれ異なるため多職種と会う機会がとても少ないです。年に数回しか開催されない会議で顔を合わせるのがやっとという場合も。
しかし患者さんに変化があったときなどは連絡を取り合い、情報共有しなければなりません。そんなときコミュニケーションを円滑にするためにも、それぞれの担当者の名前を覚えておくことをお勧めします。
なかなか名前を覚えてもらえず、いつまでも職種名で呼ばれるとあまり良い気持ちはしません。コミュニケーションを円滑に進めるためには、挨拶をきちんとしたり、名前を覚えたりすることが第一歩となるのではないでしょうか。誰でも顔や名前を覚えてもらえていると嬉しいものです。会話がスムーズに進みます。
3.看護師のもっている情報がすべてではないことを知る
看護師は他の職種と比較して患者さんと関わる時間は長い方だと言えるでしょう。しかし、看護師の知っている情報が全てではありません。なぜなら職種によって「みる」視点が異なるからです。多職種で患者さんの新しい情報提供を共有することで、新しい視点に気づくことができる場合もあります。
筆者が以前経験したことをお話ししましょう。
転倒をきっかけに歩行が億劫になりADLが急激に落ちた患者さん。ADLの維持、もしくは向上を目的に福祉用具の調整やリハビリの実施を訪問看護で取り組むことになりました。
看護師同士で意見交換をし、今までの経験からその患者さんにふさわしいと思われる看護計画を立案しましたが、念のため訪問リハビリの理学療法士にも相談したところ、私たち看護師が考えつかなかったようなアイデアをたくさん出してくれたのです。
多職種の視点で、専門的な知識を出し合ってものごとを判断することで新しい課題や解決策が見出せる可能性があることを知りました。
看護師同士での情報共有や意見交換も大切ですが、多職種で関わることで幅広い視点をもち、新しい知識を得ることにつながるのではないでしょうか。積極的なコミュニケーションが多職種連携の要です。
まとめ
多職種での連携は、学んできた領域や視点が異なるために伝わりにくさを感じることもあれば、連携をとることで新たな発見がみえることもあります。
コミュニケーションの取り方やそれぞれ置かれている環境の問題で連携の難しさを感じることもあるかもしれませんが、多職種連携は患者さんのニーズを満たすためにとても重要です。それぞれの専門性を発揮しながら、同じゴールを見据えて協力できると良いですね。
ライタープロフィール
【東 恵理】ナースLab認定ライター
看護師、保健師、介護支援専門員。 国公立大学看護学科卒業後、総合病院にて手術室、外科病棟を経験。その後、小規模多機能型居宅介護施設へ。在職中に介護支援専門員資格取得したことをきっかけに、在宅分野に興味を持ち訪問看護へ転職。一つの働き方に縛られず、フレキシブルな働き方を目指し、ライター業に挑戦。 現在、訪問看護で非常勤として働きながら看護学校非常勤講師や介護士向け研修の講師も務めている。一児の母。
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