多職種連携で大切にしたい4つのコミュニケーション

ナースライター 西山妙子
ナースライター 西山妙子
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2024年は6年に一度の医療・介護・福祉の分野で診療報酬が同時に改定されたり「医師の働き方改革」が始まったりするなど、2025年問題を目前に多職種連携の重要性がより注目されています。今回は訪問看護での経験をもとに、多職種連携のために大切にしたいコミュニケーションのポイント4つを紹介します。



多職種連携のスタートは看護師から

超高齢社会に突入し、日本の医療には「治す」ことから「治し支える」ことを中心とした転換が必要とされ、地域包括ケアシステムの考え方が浸透してきました。

地域包括ケアシステムでは本人(本人の住まい)を中心に医療が必要なときは医療を、介護が必要なときには介護サービスを、そして隣近所の方や老人会など地域の資源を活用し、病気や障害があってもその人らしい生活が送れるようにとされています。本来のその人らしい生活、暮らしぶりを把握することから始まります。

そしてその人にとって「その人らしい、本人が望んでいる生活」に必要な支援は何か、病棟スタッフの意見にプラスして医師からの治療計画や回復の見込み、リハビリスタッフからのADLの拡大状況と社会復帰、ゴール予想に加え、退院後の不足している部分において介護サービスの導入が検討されるのです。

退院場所は自宅なのか、施設なのか(転院の場合もあります)も検討されるでしょう。検討する際に大切なのは、本人が何を望んでいるのか、元々の暮らしぶりはどうかという情報です。

看護師は患者さん本人、家族からさまざまな情報を引き出す最初の関わりを担当していることが多いのではないでしょうか。普段の何気ない会話やコミュニケーションからその人なりを知ることもあるはずです。大切な情報としてしっかり記録に残し、カンファレンスで共有しましょう。



看護師さんは怖い!?

看護師さんは怖い!?

私が以前参加した医療・介護の地域での勉強会で、あるケアマネジャーさんから「利用者さんが足の浮腫を気にしているのだけれど、どうしたらいいですか?」と質問を受けました。

具体的な話を聞いてみると、訪問看護師さんが毎週訪問しているそうです。
訪問看護師さんはどのように話していますか? と聞くと、何も相談できていない、看護師さんからは浮腫について報告はないといいます。そのケアマネジャーさんにとって看護師さんへの相談にかなりのハードルを感じていると思いました。

また、他のヘルパーさんとのやり取りの中で「看護師さんの言っていることは絶対」という言葉を耳にしました。看護師の指示なら絶対にやらなければならないと思っているようです。

利用者さんの状況によっては、その方法では本人の拒否があって難しいこともあるでしょう。実際は臨機応援に対応してほしい、難しいときにはすぐに相談してほしいのが本音です。

このように、看護師の意見は正しい、看護師に相談するのはハードルが高いと、無意識に構えてしまう方が連携するメンバーの中にいることを意識しておく必要があります。介護職員や患者さん本人とその家族がいる場面では、できるだけ医療用語を使わずに伝えるなどの工夫が必要です。



「他職種連携」と「多職種連携」

「他職種連携」と「多職種連携」

看護師さんの中では「他職種連携」というように「他」という字を頭に思い浮かべる人が多いかもしれません。
看護師は病院の中でも数の多い職種であり、職能意識の高い人が多い傾向です。看護職以外との連携をどのようにしていくのかという発想から「他の」を意識するのかもしれないと私は思っています。

しかし「多職種連携」は多くの職種の方々と連携することを示しています。多くの職種の方々が一緒になって支援していくことであり、看護師はその中の1ピースです。

「私たち(看護師)は〇〇だと考える」と主張するのではなく
「あなた(他職種)は〇〇だと考えている。」を大切にすることから始めるとスムーズなコミュニケーションになるのではないでしょうか。



相手の立場に立ち、ナラティブに

ナラティブとは「物語」「語らい」などと訳される言葉です。語り手によりその内容や伝わり方が異なってくるという特徴があります。

職種によって重視している点や知りたい情報が異なることは容易に想像できますよね? カンファレンスを開いたり相談したりするとき、相手の立場を想像し、どのような文脈で語られている情報なのかを意識します。自分たちの立場で情報処理スピードを上げると相手が伝えたいことが理解しにくくなるので注意したいところです。

とはいえ、普段の業務の中でカンファレンスや相談の時間が限られていることも確かです。ですから、何気ない情報のやり取り、事務連絡であっても好意的に相手の話を聞く、電話口では声の高さを上げるなど、相手とのコミュニケーションが円滑になるよう普段から工夫しておくことが重要です。
どんな情報であれ「教えてくれてありがとう」の気持ちがあると素敵だなあと思います。



まとめ

今後、在宅復帰や合併症予防、タスクシェア、タスクシフトが必要とされるなど、ますます重要視される多職種連携。まずは患者さん本人、家族の声を聞くことから始まり、患者さんの希望を中心にそれぞれの専門知識を発揮するスムーズな医療・介護・福祉の連携が必要です。

患者さんに一番近い存在だからこそ、それぞれの職種の方を繋ぐ円滑剤として、私はコミュニケーションを大切にしたいと思っています。



ライタープロフィール

【西山妙子 (にしやまたえこ)】ナースLab認定ライター
総合病院の外科、脳外科、I C U、大学病院支出室を経験し結婚、子育てを経て訪問看護の道へ。199床総合病院の看護部長を経験した。現在は訪問看護ステーションに非常勤として働く。看護師の横のつながりや多様な働き方、ライスタイルを提案するナースのためのオンラインサロン「ナースライフバランス研究室」を2017年より企画運営(現在会員約1500ほど)ナースまつり2024大会長。

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