リフレーミングコラム 人は見た目が9割~見た目の先入観で悩んだ病棟時代~

ナースライター 黒兎さゆみ
ナースライター 黒兎さゆみ
リフレーミングコラム 人は見た目が9割~見た目の先入観で悩んだ病棟時代~

「お前じゃ話にならない!もっと上のものを呼んでこい。」
この言葉は、看護師5年目の私が新人を指導していた頃に患者さんから言われた言葉です。病棟勤務時代、私が見た目で悩んだエピソードを振り返ってみたいと思います。


私は昔からよく童顔と言われていました。看護師になるまでは若くみられてラッキーくらいにしか思っていませんでしたが、看護師になるとこの見た目で悩まされるようになったのです。


1年目の頃、とにかく自信がなかった私は、一つひとつのケアに毎回緊張していました。清拭で手が震えていたことをよく覚えています。採血や点滴などは本当に緊張して他の同期よりも失敗することが多くあったものです。失敗を繰り返すとさらに自信がなくなるという悪循環に陥ってしまいます。周りの同期は、落ち着いていたり年上の人が多かったりして、私は人一倍指導を受けていました。自信のなさが態度にも表われており、患者さんからは「あなた若いわね~」「大丈夫?」などよく言われていたことが思い出されます。


3年目になるとようやく病棟業務にも慣れて、自分の病棟に関連する疾患は一通り理解できていたため、受け持てるようになりました。一つひとつの業務の根拠まで理解できるようになっていたので、休憩中に先輩と仕事の相談や悩みを話せるまでに成長したのです。しかし、ベテラン看護師が身につけた経験や知識が患者さんにとって安心材料であることも理解しています。現時点で私はまだベテランとはいえない立場です。ですから、担当患者さんにお願いされたことはすぐに対応し、できない時は理由を伝えて待っていただくように工夫することで、患者さんが不安にならないように気をつけていたのです。


5年目になると後輩が増え、指導する機会が増えました。後輩の業務を確認するために後ろから見ていた時、私が新人で後輩がお手本を見せていると患者さんに勘違いされることがよくあったのです。私が見た目で悩んでいることを知っている先輩は「この子こう見えてもベテランなんですよー」とすかさずフォローしてくれたことがありました。


にこにこしないほうがベテランに見えるのではないかと思い、笑顔をやめてみたり、声のトーンを低くしてみたり、自分らしさを抑えたりして仕事に取り組んだこともあります。しかし、自分らしさを抑えることで患者さんとうまくコミュニケーションが取れず、必要な情報を聞き出せなかったり、入退院を繰り返す顔馴染みの患者さんに逆に心配されてしまったりと、別の問題が出てきてしまったわけです。


にこにこしないほうがベテランに見えるのではないか

そのような中でも後輩指導を何度も経験し、日々の業務も後輩指導も慣れてきた頃です。ある日、患者さんの対応で困った新人看護師が私に相談を持ち掛けてきました。患者さんからの質問は私でも答えられるものだったため、新人看護師と共に患者さんのベッドサイドに伺ったのです。するとその患者さんは私の顔を見るなり、冒頭の「お前じゃ話にならない!もっと上のものを呼んでこい。」と言ってきたのです。



「お前じゃ話にならない!もっと上のものを呼んでこい。」と言ってきた患者

発言さえさせてもらえなかったことが悔しく、主任看護師にはこんなことで手を煩わせてしまった、後輩には患者さんに怒鳴られ、解決できない現場を見せてしまった、怖い思いをさせてしまった、という気持ちでいっぱいだったのです。
この時ほど「人は見た目が9割」を実感したことはありません。



看護師歴10年以上たち、今思うこと

現在私は結婚・出産し、さすがに新人看護師と思われることはなくなりました。外来で検査や入院説明、外来診療の医師をサポートしています。患者さんから「あなたと話すと元気がもらえる。わかりやすかったわ。」とお褒めの言葉をいただくことも。新人時代の病棟勤務では、患者さんに不安を与えないように検査や治療についてわかりやすく説明するよう努めていました。その経験が今の仕事に生かされているように感じます。悩みながらも自分にできることを精一杯やっていくことが、未来の自分を助けてくれると思いながら日々仕事をしている毎日です。



リフレーミングコラムとは?

このコラムでは、看護職としてお仕事をしている皆様のなかで、心に残るエピソード、もっと上手く対処したかった悔しい経験、今だからクスッと笑える話を共有し、前向きに昇華したいと考えています。日々積み重なっている思いを同じ職種だからこそ分かち合える「看護」という共通言語でつづり、皆様にとって何かの助けになることを願っています。

ライタープロフィール

【黒兎さゆみ】ナースLab認定ライター
看護師ライター。看護師10年以上。3児のママ。消化器外科、泌尿器科、耳鼻科の混合病棟で勤務し、第1子妊娠。出産後は外来で勤務している。在宅での仕事を目指し、ライターに挑戦中。

看護師による看護師のためのwebメディア「ナースの人生アレンジ」


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