皆さん、「社労士」をご存じですか?
社労士とは社会保険労務士の略で、企業における採用から労働条件の管理まで専門的にサポートする人材です。私は看護師として勤務している中で、労働法や労災についての疑問が生まれ、その知識を深めるために社労士の道を選びました。労働基準法や労働安全衛生法など、看護師としての経験を活かして学ぶことができる法律は多岐にわたります。看護師の新たなキャリアの可能性を探る一歩として社労士の道を選ぶ方も増えてきています。
なぜ看護師を続けながら社労士を目指したのか
私が社労士を目指したきっかけは、当時の勤務形態にありました。日勤、長日勤、夜勤のシフトで働いていたのですが、超過勤務や休憩時間の取り方についての理解が足りず、何度も総務部の方に質問をしに行きました。担当者の方は丁寧に教えてくださったのですが、私の知識不足により疑問が次々と浮かび、理解できないことが多かったのです。例えば、所定労働時間と法定労働時間の違いが分からずよく混乱していました。

また、同じぐらいの時期に患者の体位変換中に私は腰を痛めてしまいました。いわゆる「ぎっくり腰」でした。スタッフに助けられ、救急外来を受診することになりました。その際、助けてくれたスタッフから「労災だね」と言われ、「え?労災って何?」と疑問が湧きました。どうすれば労災になるのか、何がどうすればいいのか全く分からなかったのです。
この2つの出来事が、私の社労士になるきっかけとなりました。看護師としての私の経験が、大きな転機となり、これらの問題について深く学びたいと思うようになったのです。労働基準法や労働者災害補償法は、社労士試験の必須科目であり、これらの法律を学ぶことで、より深い知識を得ることができました。
社労士試験のおもな試験科目
労働基準法
労働条件の原則や決定についての最低基準を定めた法律。労働契約や労働時間、就業規則などについて学びます。
労働安全衛生法
労災防止など労働者の安全と健康を確保することを目的として事業者が遵守すべき細かなルールを規定しています。ストレスチェックや健康診断などについても明記されています。
労働者災害補償保険法
一般的に「労災」と呼ばれる労働者災害。被災労働者本人や遺族への保険給付などを学びます。
雇用保険法
労働者が失業した場合に行われる各種給付や教育訓練、育児休業給付などについて学びます。
健康保険法
労災以外の病気、ケガ、死亡、出産時に給付される健康保険について学びます。高額療養費制度などについても学びます。
厚生年金保険法
民間企業に勤めている人、公務員のための年金制度について学びます。
国民年金法
一定要件に該当する者は法律により強制加入となる国民年金について学びます。
その他国民健康保険や介護保険なども試験の範囲内になっています。
どうでしょう?健康保険法、国民健康保険、介護保険法などは医療の現場では知っていなければならないことが多く記載されています。また健康保険法には私たちが仕事中以外でのケガや病気で働けなくなったときに必要な給付についても明記されています。仕事中でのケガや病気などは労災法に明記されているというわけです。労務管理については労働基準法に根拠が明記されているので、実は管理職の方にはぜひ学んでほしい法律なのです。
みなさんも挑戦してみませんか?
まさに看護師の労働環境でもある「深夜業務」「シフト勤務」など特殊な環境下で働く労務管理は現場での実務経験と知識が欠かせません。
さらに近年では疾病を抱える労働者の就業の可能性の向上が課題となっており、患者、医療機関、企業との連携が求められています。そこで医療知識と労務知識を持った人材が必要になってきます。
厚生労働大臣が認めた看護学校、同養成所等を卒業していれば社会保険労務士の受験資格をみたしているため、試験に挑戦することができます。(必ず社会保険労務士試験オフィシャルサイトで確認してみてください)
社労士試験の合格率は約6~7%と低く、合格には約1000時間の勉強が必要とされています。(試験は年に1回なのでチャンスを見逃さず)
皆さんも看護師としての経験を活かしながら、社労士として新たなキャリアを築く、職場の労働環境の改善に社労士を活かすのはいかがでしょうか。
ライタープロフィール
【根岸有】看護師 社会保険労務士
急性期の総合病院にて集中治療室、救命救急センター、一般病棟やコロナ病棟などでの看護師歴20年以上。現在は混合病棟に勤務している。その傍ら2020年に社会保険労務士資格試験に合格し2021年に社会保険労務士登録。現在は医療従事者などを対象に労務や社会保険の知識などの普及活動を行っている。




