なぜ糖尿病患者さんにステロイドはダメなの?

ナースライター ほっしー
ナースライター ほっしー
なぜ糖尿病患者さんにステロイドはダメなの?

糖尿病の患者さんにステロイドを使うと血糖値が上がりやすいーこれは、現場の看護師なら聞いたことがある話だと思います。そして、オーダーにステロイドが並んでいるのを見て「え、糖尿病なのに…大丈夫かな?」とドキッとした方もいるのではないでしょうか。でも実は、添付文書では糖尿病患者へのステロイド投薬は「禁忌」ではなく「特定の背景を有する患者に関する注意」に分類されています。つまり“絶対に使えない”わけではありません。なぜ血糖値が上がるのか、どんなリスクがあるのか「慎重投与」するべき理由を理解し、根拠を持って医師へ相談・提案できるように、ステロイドと糖尿病の関係を整理してみましょう

糖尿病患者さんにステロイドが「絶対禁忌」ではない理由

ステロイド剤の添付文書を見ると、糖尿病は「特定の背景を有する患者に関する注意」に分類されています。つまり「注意して使う必要はあるけれど、使ってはいけない薬」ではありません。
ステロイドは強力な抗炎症作用を持つ薬であり、自己免疫疾患や重度の炎症など、多くの病態で不可欠な治療薬です。糖尿病があっても、ステロイドを使わなければ命に関わるケースは少なくありません。したがって、糖尿病の影響を無視するわけではなく「血糖測定の頻度を増やす」「インスリンの追加や調整」「ステロイドを必要最小限の量にする」など、血糖値を慎重に管理しながら投与し治療をすすめています。
ここで押さえておきたいのは「禁忌」との違いです。


  • ・ 禁忌:生命に危険が及ぶため、絶対に使ってはいけない
  • ・ 特定の背景を有する患者に関する注意:リスクはあるが、注意しながらであれば使用できる

糖尿病患者さんへのステロイド使用は、後者に該当するため「ダメ」ではなく「注意して投薬する」が正解です。



なぜステロイドは血糖値を劇的に上げるのか?

ステロイドが血糖値を上げる理由は、大きく3つです。


1.肝臓が糖を作りすぎるから(糖新生の促進)

ステロイドは肝臓に「もっとブドウ糖を作って」と指示します。アミノ酸や乳酸から新たに糖がどんどん作られ、血中に放出されます。健康な人ならインスリンで処理できますが、糖尿病患者さんはインスリンの働きが弱く、血糖値が急上昇しやすくなるのです。


2.インスリンの効きが悪くなるから(インスリン抵抗性の増加)

ステロイドは筋肉や脂肪へのブドウ糖の取り込みを妨げ、さらに脂肪を分解することで遊離脂肪酸を増加させます。この遊離脂肪酸がインスリン抵抗性をさらに悪化させるのです。
2型糖尿病患者さんはもともとインスリンが効きにくいため、コントロールがますます難しくなります。


3.インスリンの分泌自体が低下するから(インスリン分泌低下)

高用量・長期のステロイド使用では、膵臓のインスリン分泌細胞が疲弊し、インスリンの分泌そのものが低下することもあります。



ステロイド投与時に看護師が確認すべきポイント

ステロイドの投与が決まったら、まずはオーダー内容をしっかり確認します。どの薬をどれくらいの量で、何日間使うのか。とくに高用量ほど血糖値が上がりやすいので、ここは最初に押さえておきましょう。
加えて、患者さんの糖尿病の状態把握も重要です。1型か2型か、HbA1cはどうか、今どんな薬を使っているかーこうした情報がそろっていると、血糖値が急に変動したときでも、医師がすぐに治療方針を判断しやすく、必要な指示につながりやすくなります。
また、ステロイド投与中は血糖測定の回数が増えることが多く、食前・食後・就寝前だけでは足りない場合も。血糖測定のスケジュールを確認し、測定漏れとその際の対処指示がどうなっているのかを確認しましょう。投与が始まったら指示に従って血糖値を測定し、血糖値の変動に注意します。特にステロイドを使うとインスリンの効きが弱くなるため、食後に上がった血糖値が下がりにくくなります。その結果、普段よりも食後の血糖値が高くなりやすいのが特徴です。また、口渇・多尿・倦怠感などの高血糖サインも忘れずチェック。もし意識の変化や呼吸の異常が見られれば、糖尿病性ケトアシドーシスの可能性もあるため、すぐに医師へ報告します。



外用(軟膏)のステロイドは血糖値に影響するの?

外用(軟膏)のステロイドは血糖値に影響するの?

ちなみに、よく患者さんに処方される軟膏タイプのステロイド外用薬について、基本的に 糖尿病の悪化を心配する必要はありません。
外用ステロイドは皮膚の局所で作用するように作られており、体内に吸収される量はごくわずか。経口薬や点滴で使うステロイドのように、血糖値を大きく上げることはありません。
ただし例外として「広い範囲への塗布」「強いランクのステロイドの長期使用」「密封療法(ODT)」では吸収量が増え、まれに全身に副作用が出ることがあるので注意しましょう。



まとめ

ステロイドは血糖値を上げやすい薬ですが、糖尿病患者さんでも「慎重投与」で適切に使うことができます。重要なのは、血糖値が上昇しやすい仕組みを理解し、血糖測定の強化やインスリン調整などのリスク管理を徹底すること。投与量・投与期間・糖尿病のタイプや治療内容を把握し、血糖値の変動に気づけるよう観察することで、安全に治療を支えることができます。



参考文献

・ 一般社団法人 日本糖尿病学会.糖尿病診療ガイドライン2024.南江堂
・大橋 健,北澤 公.腫瘍糖尿病学Q&Aがん患者さんの糖尿病診断マニュアル.株式会社金芳堂
サノフィ株式会社 患者向け糖尿病情報サイト.診断と治療の流れ 他症状でステロイド薬治療を行っている場合の注意点.
合成副腎皮質ホルモン剤 日本薬局方 プレドニゾロン錠 プレドニン5mg添付文書.



~ライタープロフィール~

【ほっしー】ナースLab認定ライター
看護師歴20年以上。国立系大学病院にはじまり、総合病院、民間中小規模病院、訪問看護とさまざまな医療機能の病院などでの勤務歴あり。
現在看護師をしながら、Instagramでの発信活動と、看護師ライターとしても活動中。

看護師による看護師のためのwebメディア「ナースの人生アレンジ」


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