「元気がない?」「ミスが増えた?」「イライラしてない?」など最近の様子が変わって気になる同僚はいませんか。心の病で休職したナースはいませんか。
同僚として何か力になれることはないのか、どう接したらよかったのか、悩んでいる人もいるのではないでしょうか。休職は、周りの人も当事者も辛い出来事。心の病に至る前に早めに気付いて休職を防ぎたいですよね。
今回は、当事者の復職支援をしてきた経験を踏まえ、メンタルヘルスの不調を抱えたナースに対して行う周囲のサポートについてお伝えします。
1.その変化、性格ではなく心の不調です!
こんな様子の同僚が周りにいませんか?
・会話が減る。
・遅刻や無断欠勤をする。
・ミスが多くなる。
・泣いたり怒ったり感情の起伏が激しい。
・苦手な仕事をやらなくなる。
・ミスを認めず他者のせいにする。
・自分を責める言葉が増える。
・「私ばっかり」と被害的に捉える。
・乱れた整容でも気にしていない。
・食事を摂らない。
・トイレに行くと時間が長い。
など……。
周囲の人は、「なぜ?」「性格の問題?」「怠けているの?」「また、ミスをして!」などと思い、ネガティブな感情を抱きますよね。相手を理解できないために生じる困惑と感情です。上記に挙げた状態は、「メンタルヘルスの不調による変化」として生じることがあります。自分ではメンタルヘルスの不調には気付かず、周囲の人が気付く場合が多いです。
2.周囲の無理解が生む悪循環
では、心の不調を抱えた人自身はどんな気分なのでしょうか。
・眠れない。
・朝が来ないでほしい。
・身体が鉛のように重い。
・お風呂に入るのもしんどい。
・勝手に涙がでる。
・仕事に行かなければと思うけど、体が思うように動かない。
・何度も確認をしてもミスをする。
・自分のせいで、物事がうまく進まない。
・皆から嫌われている。
・話が頭に入ってこない。
・失敗が怖くて処置ができない。
・自分だけが注意される。
・人と話したくない。
・自分は、役に立たないので職場に居ないほうが良い。
・消えてしまいたい。
……
メンタルヘルスが不調をきたすと、思うように身体が動かず、作業や日常生活上の行動に支障が出ます。過剰に自責的となったり、被害的で他責的となったり、視野狭窄の状態です。
自分には味方がいない、自分は不要な存在と感じ、どんどんと心を閉ざします。周囲の人は、どのように関わればよいのか困惑します。お互いに距離を置くようになり、メンタルヘルスの不調を抱えた人はさらに孤立するのです。心の病になることもあり、休職に至るまでの辛い状況となります。
以前と違うような不適応な行動や発言がある場合は、病気が関与している可能性があり本来の姿ではないという視点をもって見ましょう。
3.必要なのは傾聴、視野を広げる援助
心の病は、体の病と同じように予防と早期発見が非常に重要です。一人一人が知識を身につけ予防する観点をもちましょう。
心の病の早期発見や予防は、「周囲の人が、その人の以前や普段と比べ表情・感情の表出・態度・行動での違和感を捉える」ということが大事です。「いつもと、前と、なにか違う」に気付くことが予防の第一歩です。
次に、声をかけ、話を聴きましょう。自覚がないままに精神面での不調について声をかけられても、抵抗感を覚えますよね。体調や仕事でしんどくなっていないか心配する気持ちを伝え、話を聴いてみましょう。話すことで心が軽くなることもあります。不安、恐怖、焦り、自責感、他責感など、事実と比べて極端な考えを話した場合、否定せず受容的に聴きます。
しかし、視野狭窄な状態であれば、傾聴しながらも「私は~と思う」とメッセージを伝えてみましょう。少しでも視野を広げる手助けとなるかもしれません。
4.他愛ない会話が心地よいことも
受容と共感をしながら話しやすいように働きかけ、信頼関係を構築します。見守りと適度な声かけをしましょう。
「大丈夫?」と心配しているような声かけは、「見守っている」というメッセージにはなります。しかし、多すぎると、プレッシャーになったり、自己肯定感が下がったり、心が辛くなることがあります。他愛ない話や挨拶というほんの少しのコミュニケーションをとりましょう。
5.業務を調整、専門家につなぐ支援も
話をしてくれたら出来る範囲で可能な対応をします。業務の負担であれば、上司に相談するよう促しましょう。管理者は、業務を調整します。
本人が不調を自覚している場合、受診を提案することになります。精神面での不調を自覚していない場合、はじめから心療内科を受診することは少なく、「内科など身体科を受診し異常が見つからない」「回復に時間を要す」という場合に心療内科を紹介されることが多いです。
不眠などは心療内科や精神科が専門的であり、受診を提案してみましょう。職場内の産業保健スタッフにつなげることも1つの方法です。
まとめ
メンタルヘルスの不調は、血液データのように明確な指標がありません。言葉・行動・態度・感情表出・思考・身体症状に表れます。自分も周りの人も早くに気付けるよう、どのように変化が表れるのかを理解し、早期発見して心の病を予防しましょう。
ライタープロフィール
【生和佐梛(せいわさな)】
精神科認定看護師・キャリアコンサルタント・公認心理師・産業カウンセラー・リフレクソロジーの資格を取得。メンタルヘルスの不調により休職した方への復職を支援しています。