オペ室の看護師は、ドラマや映画でクールな姿が描かれることが多いようですが、実際の現場には表には出ないさまざまな「あるある」が存在します。患者さんの命を預かる緊張感とチームで協力するやりがい。今回はそんなオペ室看護師だからこそ共感できる、知られざる日常の「あるある」をいくつかご紹介します。
目次
「右」と「左」がわからなくなる瞬間

手術室では、患者さんの手術部位を特定するために「右」「左」を正確に認識することが不可欠です。手術によっては、創が複数に及ぶ場合もあります。手術看護記録や申し送り時に、上下肢の遠近や左右がわからなくなることがあります。術中に手術部位の変更や追加がある時は、より注意して記録するようにしています。
和やかな雰囲気をつくるための工夫
手術室では、和やかな雰囲気で手術に臨むことができれば、チーム全体のストレスを最小限に抑えられます。その中でも医師の機嫌が、その日の手術室の雰囲気を左右すると言っても良いかもしれません。冗談を交えながら和やかに手術が進む日があれば、ピリピリとした空気が流れることもあります。手術の難しさや緊急性の高さなど、その時の状況にもよりますが、私たちは和やかな雰囲気で手術できるよう配慮しています。これは、自分たちが働きやすい環境を守るためでもあり、チーム全体のパフォーマンスを維持するためでもあります。
工具を見るとついチェックしてしまう

手術室で扱う器械は、どれも精巧に作られています。鉗子やメスなど、多くの種類があり、それぞれの用途に合わせて使い分けられています。そのため、プライベートでホームセンターや工具売り場を訪れると、ついつい工具の使い勝手や形をチェックしてしまうことがあります。特にペンチやドライバーなどを見ると、無意識のうちに「これは手術で使う器械と何が違うのか?」と手に取って見てしまうのです。これはオペ室看護師ならではの癖かもしれません。
筋肉や腱を見ると「ささみ」に見える
手術中は、医師が患者さんの筋肉や腱を丁寧に扱っている姿を間近で見ます。これらの組織は、部位によって色や形が異なり、私たちはその特徴を日々観察しています。そのため、スーパーに並んでいる鶏肉のささみを見た時、ついつい人間の筋肉や腱と重ねてしまうことがあります。「このささみ、きれいに筋が通っているな」と感じるなど、日常生活の中でふとした瞬間に、仕事で見てきたものが頭をよぎるのです。
実は足が器用?
手術室では、清潔な場所と不潔な場所を厳密に分け、器械や備品を清潔に保つことが求められます。そのため、ワゴンや車輪がついたゴミ箱を足で移動させたりします。医師の足元へフットスイッチを移動させるのも足です。ガーゼや器械が足元に落ちた場合、足で邪魔にならない場所に移動させることもあります。このように、手術中は足を器用に使う場面が多くあります。決して足癖が悪いわけではありません。常に清潔を保つ意識は欠かさず「足が器用になったな」と思うようになりました。
術前訪問で患者さんに安心を届ける

患者さんにとって手術室は未知の場所であり、不安を感じやすいものです。そのため、私たちは手術前に病室を訪れ、患者さんとコミュニケーションをとることを大切にしています。手術の流れや麻酔について説明し、不安に思っていることを尋ねることで、少しでも安心して入室していただけるよう努めています。手術室へ入室すると、帽子やゴーグル、マスクを装着しているため、患者さんからは「誰だろう?」「怖そう」と思われがちです。しかし、術前のコミュニケーションを通じて信頼関係を築くことで、安心して手術に臨んでもらえるよう努めています。
まとめ
オペ室看護師の仕事は、専門知識や技術だけでなく、チームワークやコミュニケーション能力など、いろいろなスキルが求められます。今回ご紹介した「あるある」は、私たちが日々感じているごく一部のことですが、どれも手術室のリアルな日常です。時には大変なこともありますが、患者さんが退室されるとほっとします。このコラムが、オペ室看護師の仕事に少しでも興味を持つきっかけになれば嬉しい限りです。
ライタープロフィール
【片山はるか】ナースLab認定ライター
三重県鈴鹿市在住。看護師の自立と多様な働き方をサポートしたいという思いがあり、看護師をしながら、看護師ライターやSNS運用、ナースまつり実行委員に携わる。
小児科急性期、糖尿病/呼吸器内科、脳神経内科、現在は手術室に勤務。看護大学で小児看護学助手として研究補助・実習指導の経験もあり。
3児の母。
ブログ:現役看護師/看護師ライター/看護師の起業コンサル@片山はるか
看護師による看護師のためのwebメディア「ナースの人生アレンジ」




